おやぢの部屋2
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FEMINA MODERNA
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Maria Goundorina/
Allmännna Sången
BIS/SACD-2224(hybrid SACD)




前回は「女性作曲家によるフルート音楽」でしたが、今回は「女性作曲家による合唱作品」というアルバムです。タイトルが「フェミナ・モデルナ」という気取ったラテン語ですが、意味は「現代の女性」というシンプルなものです。別に犬に追いかけられていたら、前に犬の糞があったわけではありません(それは「踏むな、戻るな」)。さらに、「現代の女性」とは言っても、男性顔負けのワーカホリックで、たとえばデートの誘いも断るぐらい、何もかも犠牲にしてひたすら仕事だけに邁進する、という可愛いげのない女性のことでもありません。
つまり、このタイトルでは肝心の「作曲家」という言葉が抜けているのですよ。ということはCDを装丁したレーベルのせいにして、ここでは制作国のスウェーデンのみならず、アメリカ、イギリス、ロシアなど、世界中から集まった13人の「女性作曲家」の手になる無伴奏合唱曲を楽しむことにしましょう。
演奏しているのは、スウェーデンのウプサラ大学を母体にした合唱団「アルメンナ・ソンゲン」です。この合唱団のBISへの最初の録音は2008年、そのCDはすでにこちらで聴いていました。その時に書いていたように、その録音のすぐ後でそれまでの指揮者だったセシリア・ライディンガー・アリンが同じ大学を起源とする男声合唱団「オルフェイ・ドレンガル」に行ってしまったので、2010年からはロシア出身のマリア・グンドーリナが芸術監督に就任しています。どちらも「女性」ですね。
指揮者がずっと女性だったから、というわけではないのでしょうが、この合唱団は女性の作曲家の活動にも熱心に支援の手をさしのばしているのだそうです。そんなところから出来上がったのが、今回のアルバムです。ここで演奏されている作品で最も「古い」ものは1985年のもの、そして最も「新しい」のは、2015年に出来たばかりですから、まさに「現代の音楽」が集められていることになります。それらは、もちろん作曲家の個性が反映されて様々な形を見せてはいますが、いずれも、基本は古典的なハーモニーを大切にした中に、かつて「前衛音楽」と言われていたものが持っていた様々な表現様式をスパイス程度に加える、といったような、「古いのだけれど、新しい」という手法が採られていて、まさに最近の「現代音楽」の潮流が見事に反映されているように感じられます。
そんな中から、個人的に確かなインパクトを与えられた作品をいくつか。まずは、最年少、1991年生まれのクララ・リンドショーの「The Find」。彼女はかつてこの合唱団のメンバーだった人で、トラディショナル・シンガー・ソングライターとしても活躍しています。彼女自身がソロを歌っているこの曲は、まさにそんなフォーク・ポップといった、ヒット・チューンにでもなりそうなキャッチーなメロディを持ったものです。彼女のちょっとハスキーな声に、バックとしてとても分厚い合唱のハーモニーが加わっているのが、素敵です。
その次に若いアンドレア・タロディの「Lume」は、「光」という意味のこの単語だけが静かに流れてクラスターを作り上げるという、まるで「21世紀の『Lux aeterna』」といった趣の作品です。「本家」のリゲティよりもずっとカラフルな仕上がりなのは、やはり「女性」が作ったからなのでしょうか。
もう一つ、こちらはウクライナ出身のガリーナ・グリゴリエヴァが作った、男声だけで歌われる「In paradisum」が、意外性のある発想で気に入りました。フォーレやデュリュフレなど、繊細な女声のイメージのあるこのテキストを、まるでロシア民謡のような逞しいものに仕上げたのですからね。
おそらく、この合唱団はこういう作品に向いているのでしょう。ちょっとロマンティックなもの(たとえばリビー・ラーセンの「Songs of Youth and Pleasure」)では表現の浅さがみられるものの、大多数の「現代」のテイスト満載の曲では、とても積極的な音楽を楽しみながら作っているのがよく分かります。

SACD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2016-11-24 20:55 | 合唱 | Comments(0)