おやぢの部屋2
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コートはクロークに預けましょう
 きのうの禁断、ブログ版のタイトルには説明が必要でしたね。バイエルン放送交響楽団のコンサートは、マーラーの交響曲第9番のみという「一曲プロ」でしたから、当たり前の話ですが、途中に休憩は入りません。ですから、開演前のアナウンスでは何度も「この演奏会には休憩がございません」と繰り返していました。アナウンスの情報はそれだけのことですが、その中には「お年寄りの方は、前もってトイレに行っておいて下さい」という意味が込められているのは明白です。映画館ではないのですから途中で席を立ってトイレに行く、などということは許されませんからね。ですから、それを聞いてみんなトイレに殺到していたんですね。それが、男子の場合は外にまではみ出て列ができるなんてことはまずないのに、それがロビーいっぱいに伸びていたのが、ちょっと珍しいことでした。
 ただ、そんな列が目に入ったのは2階のロビーだけ、あとで座席表を見てみたら、このホールは2階席の方が席数が多いのですね。ですから、プログラムを買う列も、2階ではものすごく長かったものが、1階ではほとんど並んでいる人なんかいませんでした(だから、その人にCD即売のことも尋ねることができたわけで)。
 演奏が始まるころになると、座席はほとんど埋まってきましたが、いくらかは空席がありました。やはり、人身事故の影響で電車が止まって開演時間に間に合わなかった人がいたのでしょうか。この都会ではそんな事故は毎日起こっていますからね。実は、私が座った席の隣も、空席でした。でも、そこには黒いコートが置いてあったので、ロビーに出ているのかな、と思っていました。ところが、演奏が始まってもそこには誰も戻っては来ませんでしたよ。コートだけ置いてロビーに出たものの、それこそ私みたいに1階への入り口が分からなくなってしまって締め出されてしまったのでしょうか。
 結局、その席には最後まで誰も座ることはありませんでした。演奏が静かに終わり、一旦静まり返った客席が、ヤンソンスが腕を下すと同時に盛大な拍手で満たされます。まだ開演してから1時間半しか経っていませんが、当然アンコールはないでしょう。ですから、あとは思う存分拍手を送り続けるだけです。と、正面、ステージの裏側のP席の人が、結構大人数で動き出しました。こんな素晴らしい余韻も楽しまないで、もう帰ろうというのでしょうか。しかし、彼らはその階の扉から外、つまり2階のロビーに出るのではなく、私が迷った唯一の1階への通路めがけて走っていくようです。案の定、しばらくしたら1階席の入り口から、その人たちが入ってきました。ということは、これは「一般参賀」のための準備なのでしょうか。
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 ご存知でしょうが、「一般参賀」というのは、こんな風にオケのメンバーがみんなはけたあとに、指揮者だけ呼び戻されて観客の拍手を浴びるという「儀式」です(この写真は本文とは無関係)。私は、大昔、カール・ベームとウィーン・フィルをNHKホールで聴いたときにこれを体験しました。座っている人も、わざわざ前に出てくるんですよね。でも、それ以来一度も遭遇する機会がありませんでした。もちろん、ニューフィルのコンサートでそんなことが起こったことなんか、一度もありませんでしたからね。それを見届けてから帰りたかったのですが、ここに来た時にクロークがあまりに広かったので、せっかくだからとコートを預けてしまいました。私は少し早く着いたのですぐ預かってもらえましたが、そのあとはものすごい人が押し寄せていたようなので、帰りはすぐに受け取れるように、ちょっと早めに出たかったのですよね。
 そこで、オケが引っ込むタイミングで席を立って、まずコートを受け取り(一番乗りでした)、また引き返して外から様子を見ていると、どうやら「一般参賀」は行われなかったようですね。
 さっきの、私の隣の席のことですが、演奏が終わると、その向こう側に座っていた高齢の女性が、そのコートを取り上げて着始めたではありませんか。別に黒だからと言って、男物とは限らなかったのですね。というか、そうやって堂々とコートを置いていたということは、彼女はそこが空席であることを知っていたのだ、ということになりますね。その理由はただ一つ、本当はご主人と一緒にコンサートに行くつもりでチケットを2枚買ったのですが、普段から病弱だったご主人は、この不順な天候でとうとうお亡くなりになってしまったんですね。ですから、奥さんはせめて好きだったマーラーをご主人にも聴いてもらおうと、遺影を空席の上に置いて、一緒に聴いていたのでしょう・・・・なわけはないですね。ただ風邪をひいただけなのでしょう。そこには遺影なんてありませんでしたから。
by jurassic_oyaji | 2016-11-28 21:40 | 禁断 | Comments(0)