おやぢの部屋2
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RZEWSKI/The People United Will Never Be Defeated!
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Igor Levit(Pf)
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ジェフスキの「不屈の民変奏曲」に、また新しいアイテムが加わりました。これで、この作品のアルバムは10種類を超えたことになります。ただ、今までリリースされていたのは、ほとんどがマイナーレーベルからのものでしたし、ピアニストもアムランなどを除けばそれほど広く知られている人ではありませんでした。
しかし、レコーディングまでは行わなくても、リサイタルで取り上げている人はもっとたくさんいることでしょう。2014年の6月にウィーンのムジークフェラインザールで行われる予定だったマウリツィオ・ポリーニのリサイタルが、急なアクシデントのためにキャンセルされた時に、急遽その代役を務めたイゴール・レヴィットもそんな一人です。リサイタル当日にオファーを受けて急遽ウィーンに飛んだ彼は、その時に演奏されるはずだったシューマンやショパンの曲に代わって、ベートーヴェンの後期のソナタ2曲と、この「不屈の民」を演奏したのです。ベートーヴェンはともかく、ポリーニが弾く「名曲」を期待していたお客さんは面食らったことでしょうね(チケット代は払い戻されたのだそうです)。
そんな事件で一躍有名になったレヴィットは、1987年にロシアに生まれた天才少年でした。その音楽の才能を伸ばすため、8歳の時に家族とともにドイツに移って音楽教育を受けています。小さなころから各地のコンクールで入賞、2004年には浜松国際ピアノアカデミーコンクールでも第1位を獲得しています。2012年には、ソニー・クラシカルと専属アーティスト契約を結び、翌年にはベートーヴェンの後期ピアノソナタ集のアルバムでメジャー・デビュー、2014年にはバッハのパルティータ集をリリース、そして、2015年にリリースされたのが、そのいわくつきの「不屈の民」と、バッハの「ゴルトベルク」、ベートーヴェンの「ディアベリ」がカップリングされた「3大変奏曲集」です。
そして、つい最近、その3曲がそれぞれ単売されるようになりました。これで、「不屈の民」のアルバムがソニーという超メジャーからリリースされることになり、単なる「現代音楽」を超えた「名曲」となってしまいました。
まず、今まで出ていたこの曲のCDと決定的に違うのは、音の良さです。やはり「現代音楽」にはなにか先鋭的なイメージがあるようで、妙にギスギスした音のものが多かったような気がします。今回はまず録音された場所が、こちらでも使われていた旧東ドイツのラジオスタジオです。非常にくせのない音響を誇っているようで、とてもふくよかな響きが感じられます。そして、レコーディング・エンジニアが名匠アンドレアス・ノイブロンナー(TRITONUS)ですから、芯のある、それでいて繊細な音を味わうことが出来ます。
なんせ、急に頼まれたリサイタルで演奏したぐらいですから、そもそもレヴィットはこの作品には愛着があったのでしょう。この難しい曲の音符は、隅から隅まできっちり磨き上げられていて、胸のすくような鮮やかさ、しかし、それぞれの音にはとても暖かみがこもっています。そして、時折聴こえるピアニシモの繊細なこと。この曲には、こんな「名曲」たる要素が、すでにしっかり宿っていたことを実感させられるような演奏でした。何しろ、テーマからして「おれたちは負けない!」というようなこけおどしの感じが全くない、いとも爽やかなものでしたからね。
それが、最後のテーマの前に出てくる「Improvisation」になると、足音や楽器を叩く音などを交えた過激なものに変わります。そんな落差も楽しめる素晴らしい演奏です。
蛇足ですが、これは「即興と主題」と表記された最後のトラックではなく、その前の第36変奏のトラックの途中、2分ごろから聴こえてきます。

ごく最近こんなのがあったばかり。CDの黄昏を目前に控えて、こういう「不良品」があふれかえってきたのは、あきれかえった事態です。というか、配信でもそのまま間違えてるし。


CD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2016-12-08 20:15 | 現代音楽 | Comments(4)
Commented by Hippo at 2016-12-08 21:45 x
こんばんは。

私は、mora(ソニー系)でダウンロード購入しました。

全38トラックの曲名が
「The People United Will Never Be Defeated! - 36 Variations on !El pueblo unido jamas sera vencido! /」
と全く同じになっていました。何の情報もありません。100文字以内にする決まりでもあるのかな。

おそらく音源元のソニーがこんなでたらめなので、e-Onkyoは少しでもと努力したが力及ばす、ってとこでしょうか。

いずれにせよ、プロの仕事とは言えませんね。
Commented by jurassic_oyaji at 2016-12-08 23:26
Hippoさん、こんばんは。
確かに、moraの表記はすごいですね。物を売ろうという気持ちが全く感じられません。
ハイレゾではなくAACなんですね。
Commented by Hippo at 2016-12-08 23:45 x
こんばんは。

不屈の民変奏曲等の分売のアルバムは何故かAACだけですね。
自分は、バッハ、ベートーヴェンと一緒のハイレゾを泣く泣く大枚をはたいて(大げさな)購入しました。

AACの曲名の方がまだ改善されてますね。ハイレゾの方は、100文字で切られていて、不屈の民(これがひどい)もディアベリもかなしいことになっていました。
Commented by jurassic_oyaji at 2016-12-09 08:07
Hippoさん
CDがなくなれば次は配信だ、というのに、配信サイトの商品知識の欠落といい加減な販売体制には暗澹たる気持ちになってしまいます。
未だに30秒程度でも「1曲540円」なんて、いったい何を考えているのでしょうね。