おやぢの部屋2
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ADAMS/Scheherazade.2
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Leila Josefowicz(Vn)
David Robertson/
St. Louis Symphony
NONESUCH/7559-79435-1




アメリカの作曲家ジョン・クーリッジ・アダムズ(今までは「ジョン・アダムズ」だけでよかったのですが、最近「ジョン・ルーサー・アダムズ」という、似たような名前で似たような作風の作曲家も活躍しているので、ミドルネームが必要です)の最新作です。ニューヨーク・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、シドニー響の3つのオーケストラからの共同委嘱によって作られ、2015年の3月26日にアラン・ギルバート指揮のニューヨーク・フィルによって初演されたばかりの曲が、もうCDになってしまいました。ヴァイオリン・ソロは、初演と同じリーラ・ジョゼフォビッツです。彼女はアダムズの曲を数多く演奏しているパートナーで、この作品でもお互いに意見を出し合って作曲を進めるという共同作業が行われていたそうです。
アダムズが取り上げたモティーフはアラビアン・ナイトの世界です。同じくアラビアン・ナイトを題材とした有名なリムスキー・コルサコフの「シェエラザード」を意識していたことは間違いないのでしょうが、もちろんその作品のコピーでもなければパロディでもありません。全く新しい視点で、現代的な問題意識までも盛り込んで作り上げたのだ、という意志を明確にするために、タイトルは「シェエラザード・バージョン2」。元ネタから大きくアップデートされていることを強調しているのでしょうね。
サブタイトルも付いていて、それは「Dramatic Symphony for Violin and Orchestra」というものです。「交響曲」ということで、全体は4つの楽章から出来ています。そして、その中には「ドラマティック」の要素があるのだぞ、ということを分からせるために、それぞれの楽章には「賢く若い女性のお話-信じていた人たちから追いかけられる」、「宿望(ラブシーン)」、「シェエラザードと髭面の男たち」、「脱走、戦い、聖域」というタイトルが付けられています。これを見ただけで、安直なテレビドラマのシーンが浮かんでくるようですね。もちろん、作曲家としてはこれはあくまで解釈への一つの可能性としての指針を示してるのだ、と思いたいものです。
ヴァイオリンが常にシェエラザード役で登場するのは、リムスキー・コルサコフと同じアイディアですが、アダムズはそれに加えてアラブ世界を想起させるアイコンとして、「ツィンバロン」をフィーチャーしました。「真田丸」に出てくる衣装(それは「陣羽織」)ではなく、ハンガリーが起源で、中東方面で広くそのヴァリエーションを見ることが出来る、言ってみればグランドピアノの弦を叩いて音を出す楽器です。ハンガリーの作曲家コダーイがオペラ「ハーリ・ヤーノシュ」の中で使って、広く知られるようになりましたね。
ここでツィンバロンを演奏しているのは、アメリカの打楽器奏者のチェスター・イングランダー。彼は普通のオーケストラの中の打楽器だけではなく、ツィンバロンのスペシャリストとして知られていて、アメリカ中のオーケストラが、この楽器が必要な時には彼を呼んでいます。
そんな、いかにもアラブっぽいサウンドに導かれて、「交響曲」は始まります。作曲家自身のコメントによるとここではシベリウス、プロコフィエフ、バルトーク、そしてベルクなどの先人の技法が見られるそうですが、確かにヴァイオリン・ソロの書法はベルクのヴァイオリン協奏曲を思わせるものがあります。そして、第1楽章の混沌とした気配はシベリウスでしょうか。第3楽章や第4楽章のバーバリズムや変拍子はバルトークなのかもしれません。しかし、第2楽章の甘い雰囲気を醸し出す和声はもしかしたらメシアンあたりが起源なのかもしれませんし、全体になんとなくラヴェルの「ダフニスとクロエ」のモティーフが顔を出しているような気がしないでもありません。
いずれにしても、他の「現代作品」と同様、この曲が広く世界中のオーケストラで頻繁に演奏されるということは、きっとないでしょうね。

CD Artwork © Nonesuch Records Inc.
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by jurassic_oyaji | 2016-12-17 20:39 | 現代音楽 | Comments(0)