おやぢの部屋2
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ビートルズは眠らない
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松村雄策著
小学館刊(小学館文庫 ま19/3)
ISBM978-4-09-406388-2




2003年にロッキング・オンから刊行された書籍の文庫化です。そのロッキング・オンという、著者の松村さんと渋谷陽一さんが創設した雑誌に掲載されていたエッセイの他に、CDのライナーノーツなどが収められ、1991年から2003年までにビートルズに関して書かれたものが、執筆順に並べられています。このように、初版から文庫化までに長い年月が経っている時には、よく「後日談」のようなものが書き加えられているものですが、ここには一切そのようなものはありません。あるのは、別の人が書いた、文庫本にはお約束の「解説」だけです。ただ、その中に、著者の近況についてとんでもないことが書かれていたので、びっくりしてしまいました。
松村さんのことは、ロッキング・オン誌に連載されている(されていた?)「渋松対談」での、社長の渋谷さんの「相方」としてずっとなじみがありました。それだけですでに何冊かの単行本になっているのだそうですが、その二人のやり取りは、軽妙なものに見せかけて、実はロックへの深い愛情が感じられる、とても面白いものでした(本当は「対談」ではなく、対談という形をとって一人で書いていたエッセイだったようですね)。
その対談の中でもよくビートルズについて「語って」いたように、松村さんといえばおそらくこのバンドについて語らせたら右に出る人はいないのでは、というほどの知識と、そして実体験を持っている方です。
まず、なんと言っても彼は実際にビートルズの最初で最後の日本公演に行って、彼らの演奏を実際に聴いているというのが、すごいことです。ご自身もそれは誇りにされていることは、文中からくっきりとうかがえますが、そういう方がライターとしてその体験を公に出来たという事実に、まず感謝しなければいけません。というのも、この武道館で行われた公演の模様は、当時からずっと報じられていたのは、「観客の悲鳴にかき消されて、演奏などは聴こえなかった」というものでした。ですから、まあそんなところだったんだろうと、かなり最近までずっとそれを信じ切っていたのですが、実際にその場にいた松村さんには、しっかりビートルズの演奏が「聴こえて」いたのだそうです。コーラスがハモらなかったところまできちんと分かったそうですから、それは決して「悲鳴にかき消された」という状況ではなかったようですね。確かに、最近になってその頃の映像とかライブCD何かを聴いてみても、別に「悲鳴」はそんなに邪魔にならないな、と思うようになっていましたから、これが正しい情報なのでしょう。つまり、当時はそんな状況を正しく伝える人などだれもいなかったので、メディアが捏造した情報をみんなが真に受けていたことになるのでしょうね。
同じような情報で、その来日公演のあたりに中学生ぐらいだった世代の人たちが、「当時はクラス中の人がビートルズのファンだった」と言っていることも、真っ赤なウソであることが暴かれます。本当はほとんどの人はビートルズなんかは大嫌いだったのですよ。それが、彼らが大人になってビートルズの人気が確固たるものになった時点で、みずからの思い出をやはり「捏造」していたのですね。そんな指摘には、なんともスカッとさせられます。
そんな昔の話だけではなく、エッセイが書かれた当時に起きていたビートルズ関連の事柄に対する正直なリアクションも新鮮です。「イエロー・サブマリン・ソングトラック」がリリースされた時に、それが「リミックス」だと知った松村さんの思いには、おもいに(大いに)共感できます。彼はそこにはっきりと、ビートルズの音源の将来あるべき姿を見ていたのですね。それが「1」が出た時にはオリジナルだったので失望していましたが、今ではその「1」もリミックス・バージョンに変わっていますから、彼の「予言」は当たっていたことになります。

Book Artwork © Shogakukan Inc.
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by jurassic_oyaji | 2017-01-12 23:25 | 書籍 | Comments(0)