おやぢの部屋2
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HIMMELRAND
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Ingel-Lise Ulsrud(Org)
Elisabeth Holte/
Uranienborg Vokalensemble
2L/2L-126-SABD(hybrid SACD, BD-A)




オスロにあるウラニエンボルグ教会には立派なオルガンもあり、定期的にコンサートが開催されています。大雪が降っても、お客さんはやってきます(それは「ウラニホン」)。
2002年にこの教会の音楽監督に就任した合唱指揮者のエリサベト・ホルテは、付属の合唱団「ウラニエンボルグ・ヴォーカルアンサンブル」を設立しました。この合唱団は、教会の行事やコンサートの他に単独のコンサートやツアーも行い、アルバムも今までに2枚リリースしています。3枚目となるアルバムが、この「HIMMELRAND」です。ここでは、この教会のカントール(オルガニスト)、インゲル=リーセ・ウルスルードも参加して、伴奏やソロの即興演奏を披露しています。
このアルバムのコンセプトは、ノルウェーに古くから伝わる聖歌や最近作られた聖歌、さらには、ここで委嘱されて新たに作られた聖歌という3つの成り立ちを持つものたちを、同じ地平に並べてそれぞれの魅力を伝える、ということなのではないでしょうか。聴いている者は、とてもシンプルな讃美歌にどっぷり浸かって癒されることと、現代作曲家のある意味挑戦的ともいえる尖がった音楽に真剣に立ち向かうことの双方を交互に体験する中から、「聖歌」の持つ意味を深いところで知ることができるようになるのです。
タイトルにある「HIMMELRAND」というのは、「地平線」という意味なのだそうです。それは、今回の委嘱作の中の一つ、1979年に生まれたオルヤン・マトレの「日の光が『地平線』に沿って広がるところ」という、5世紀のテキストに12世紀のメロディが付けられた聖歌を元にした作品に由来しています。その聖歌のメロディ・ラインは、まさにプレイン・チャントといった趣があるとても鄙びたものですが、音楽の方はクラスターを多用してとても聴きごたえのあるものに仕上がっています。
さらに、合唱団のソプラノのメンバーでもあるマリアンネ・ライダシュダッテル・エーリクセン(1971年生まれ)に委嘱したのは、「雨よ来い、平和よ来い、慰めよ来い」という作品、それぞれの歌い出しで始まる3つのテキストが使われています。曲は、フライリングハウゼンという18世紀の作曲家が作った12声部の合唱曲のモティーフの断片と、エーリクセン自身が作ったモティーフが絡み合って、とても刺激的な音楽となっています。ソプラノのソロは、作曲者自身が歌っています。
もう一人、こちらは有名な作曲家オーラ・ヤイロに委嘱したのは「日の出への賛美」という聖歌です。これは、他の2曲に比べるといともまっとうでシンプルな編曲ですから、安心して聴いていられます。この曲の前には、オルガンによって同じ聖歌のモティーフによる即興演奏が聴かれます。
もう一つ、マグナム・オールによってかなりぶっ飛んだ編曲が披露されているのが「おおイエスよ、あなたは溢れるほどに満たしてくれるお方」という、19世紀に作られた聖歌です。ここではソリストが2人登場します。少し低めの声で、オリジナルのメロディを歌っているのが、この合唱団のかつてのメンバーだったソプラノのマティルダ・ステルビュー。そして、それに絡み付くように、甲高い声でまるで無調のような全く融けあわないメロディを歌うのが、先ほどのエーリクセンです。面白いのは、3度繰り返されるオリジナルのメロディが、3回目になるとあのニューステットの「イモータル・バッハ」のように微妙に不思議な音程に変わってしまうことです。
ステルビューのソロはもう1曲あって、デンマークの作曲家カール・ニルセンが作った「イエスよ、私の心を受け止めてください」という聖歌が、別の「年の終わりは深まる」というノルウェー語のテキストで歌われています。このメロディは、ニルセンの木管五重奏曲の最後の変奏曲の楽章のテーマになっていますね。
録音は、いつものDXDで、それがSACDとBD-Aになっています。繊細なSACD、コクのあるBD-Aと、全く異なる音が聴けます。

SACD & BD Artwork © Lindberg Lyd AS
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by jurassic_oyaji | 2017-01-19 20:28 | 合唱 | Comments(0)