おやぢの部屋2
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LIGETI/Chamber Music
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François-Xavier Roth/
Les Siècles
ACTES SUD/ASM 26



ロトの指揮する「レ・シエクル」のメンバーが集まって室内楽を演奏しえくれたアルバムです。しかし、それが全てリゲティの作品ばかり、というのが不思議ですね。今まで、このオーケストラは作曲された当時の楽器を使ってその頃の音楽を再現する、というのが基本的な姿勢だったはずなのに。
それについては、ロト自身がブックレットの中のインタビューで、答えを述べているようです。ロト自身はこれまでに多くのリゲティのオーケストラ作品を、別のオーケストラで演奏していて、リゲティ本人とも交流がありました。そこで、リゲティが人を魅了するものが、その色彩感のあり方だと気づき、そこに自分のオーケストラで演奏することの意義を見出した、というのですね。このあたりはあまりに抽象的で、いまいち、よく分かりませんが、彼は「レ・シエクル」の方法論をリゲティに応用することに、大きな魅力を感じたことは確かなようです。
ですから、今回は今まであったようなそれぞれの使用楽器についてのクレジットは一切ありません。ただ、ブックレットの中のメンバーがそれぞれの楽器を持っている写真によると、ファゴットはフランス風のバソン、ホルンも今では珍しいフランス式のピストンのついた楽器であることだけはかろうじて分かります。ですから、めざとくそれを見つけた日本の代理店は、サイトのコメントで、管楽器の奏者がフランス風の楽器を使って「今や絶滅寸前の19世紀的なフレンチ・サウンドを聴かせ」ていることに驚いているようですね。しかし、それはさっきのロトの話からは全くの見当はずれの指摘であることが分かります。さらにロトは話の続きで、この、管楽器を多用したレパートリーを演奏するにあたって、「20世紀の音楽は、管楽器によって情感を強烈に表現できるようになった」と言い切っていますからね。
そもそも、ここで演奏されている「6つのバガテル」はハンガリー、「10の小品」はスウェーデン、そして「室内協奏曲」はウィーンでそれぞれ初演されていて、「フレンチ・サウンド」とは無縁のもの、ロトはもっと深いところでこのオーケストラの可能性を信じ、新しい挑戦を企てたのではないでしょうか。
ということで、ここで取り上げられたリゲティの作品は、まずは管楽器ばかりが使われている木管五重奏(フルート、オーボエ、クラリネット、バソン、ホルン)のための曲が2つです。その、1953年に作られた「6つのバガテル」と、1968年に作られた「木管五重奏のための10の小品」とでは、作曲家の作風がまるで別人のように異なっていることには、誰しも驚かされるでしょう。「バガテル」はもちろんピアノ曲の「ムジカ・リチェルカータ」の中の曲を編曲したもの、音の選び方こそ先鋭的ですが、音楽自体は民族色の濃い、まさにバルトークの亜流です。そして、「10の小品」は、ウィーンに亡命後、当時の最先端の「現代音楽」に接してからの作品です。「10の小品」ではその偶数番号の曲で木管五重奏のそれぞれのメンバーがソリスティックに活躍するように作られていますが、そこでのメンバーのうまさには舌を巻きます。
「室内協奏曲」は1970年の作品。木管五重奏からファゴットが抜けてバス・クラリネットが加わった5人の管楽器に、トロンボーンと弦楽5部、さらにキーボードが2人(ピアノとチェンバロ)入った13人で演奏されます(さらに、ロトが指揮をしています)。この曲も技巧的なパッセージは数知れず、4曲目などはとても人間業とは思えません。チェンバロ奏者はハルモニウムかハモンド・オルガンも弾くように指定されていますが、ここではハモンド・オルガンが使われています。この曲の中で唯一和みが感じられる2曲目の静かな音楽のバックに流れるその楽器の音は、いかにも未来的、ここで19世紀のハルモニウムではなく20世紀のハモンドを選んだロトが目指したものは、やはりただの懐古趣味ではありませんでした。

CD Artwork © Actes Sud

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by jurassic_oyaji | 2017-01-26 20:39 | 現代音楽 | Comments(0)