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SCHUBERT/Works for Flute
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Karl-Heinz Schütz(Fl)
Bruno Canino(Pf)
CAMERATA/CMCD-28343


立て続けにシュッツのアルバムを聴いています。今回はシューベルトの作品集。とは言っても、この中でオリジナルは「しぼめる花変奏曲」だけですが、カップリングはこういうアルバムを作るときにはよく一緒にされている「アルペジョーネ・ソナタ」と、テオバルト・ベームが編曲したシューベルトの歌曲集というまさに定番のラインナップです。
ピアノ伴奏がブルーノ・カニーノというのも、魅力的。もうかなりのお年になるのでしょうが、まだ「現代音楽」が元気だった時代には、目覚ましい活躍をしていたピアニスト、という印象の強い人です。なぜそんな人がシュッツと?という疑問がわきますが、彼はそんな時代に、オーレル・ニコレとかセヴェリーノ・ガッツェローニといった「現代音楽」のスペシャリストであるフルーティストとの共演を頻繁に行っていたのでした。彼はこのレーベルにも多くの録音がありますし、このレーベルが運営に関係している草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルにも出演しています。その草津で、この二人が共演した時のことが、ブックレットで述べられていますが、シュッツにとってカニーノはアイドルのような存在だったようですね。実際にカニーノが初演したブルーノ・マデルナの作品を演奏するというので、シュッツはとても興奮していたのだそうです。
それは2015年のことですが、翌年に同じメンバーがイタリアの美術館で録音したものが、このCDです。
全くの偶然ですが、この時に録音された「アルペジョーネ」は、別の人の演奏で聴いたばかりでした。その時に彼女が使っていたのはゴールウェイ版とグラーフ版とのいいとこ取りというバージョンだったのですが、今回のシュッツは「グラーフ版」を使っているとしゅっと書いてありました。ですから、図らずもこの二つの版の比較ができることになりました。
やはり、こうして聴いてみると、シュッツにはグラーフ版の方が合っているような気がします。シュッツの場合、おそらく最も磨き上げているのは中音のように感じられますから、高音はとてもあっさりしていて、その結果全体のセンスがとてもいいんですよね。これは、ゴールウェイとは全く別の魅力です。それはそのまま、ウィーン・フィルの魅力へとつながっていくのでしょう。
楽譜の件でちょっと気になったところがありました。それは、第3楽章で流れるようなテーマが終わって調が変わり、ちょっとアクティブになってすぐ、タイムコードだと01:31あたりです。
この音は、このオリジナルのベーレンライター版では「F」なのですが、それをシュッツは「E」で演奏しているのです。つまり、この小節は「ファミミミ/ファミソシ」ではなく「ファミミミ/ミミソシ」となります。実は、ここはゴールウェイ版でも楽譜は「ファミソシ」なのに、ゴールウェイの録音では「ミミソシ」と吹いているのですよ。
この部分、シューベルトの自筆稿ではちょっと曖昧な感じ、「F」とも「E」ともとれるところに音符がありますね。ただ、スラーが付いているので同じ音だとタイになってしまいますし、その後何度か出てくる同じフレーズは、すべて「ファミソシ」の音型になっていますから、ここはまず「ファミソシ」ではないかと思うのですが。
ただ、このブライトコプフ版では、ここは「ミミソシ」になっているのです。グラーフ版(ZIMMERMANN)の楽譜はまだ見たことがないのですが、どうなっているのでしょうね。
ほれぼれするようなシュッツのフルート、そして低音のとても美しいファッツィオーリの楽器で絶妙のサポートをみせるカニーノのピアノも素晴らしいのですが、このCDには商品としてはあってはならない欠陥が。トラック6の、ベーム編曲による「漁師の娘」の冒頭のピアノの音が、ほんの何マイクロセカンドか欠損しているのです。これは明らかな編集ミス。マスタリングを担当したY.T.という男の、プロとは思えない失態です。

CD Artwork © Camerata Tokyo Inc.

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by jurassic_oyaji | 2017-04-06 21:21 | フルート | Comments(0)