おやぢの部屋2
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BOKSAY/Liturgy of St. John Chrysostom




Tamás Bubnó/
St. Ephraim Byzantine Male Choir
HUNGAROTON/HCD 32315



この曲を作ったヤーノシュ・ボクシャイというハンガリー人の名前は、その引っ込み思案な性格(ぼ、ぼく、シャイなんです・・・)のため(ではないだろう)、おそらく知っている人は誰もいないことでしょう。もちろん、私も初めて聞きました。1874年に、現在ではウクライナ領となっているフストという町の敬虔な正教徒の家に生まれたボクシャイさん、長じて教会での司祭や聖歌隊の指揮者を務めるようになった、いわば聖職者でした。そして、正教の典礼音楽として、以前ラフマニノフのものをご紹介した事のある「聖クリソストムの礼拝」を10曲も作ったという作曲家でもありました。そのうちの4曲が現在まで残っているそうなのですが、その中の男声合唱のために1921年に作られたものが、今回自筆稿を用いて2004年5月に録音されました。もちろんこれが「World Premiere Recording」となります。
この曲で特徴的なのは、男声パートだけの男声合唱で歌われるという事です。変な言い方ですが、さっきのラフマニノフの場合には、パートとしての「女声」はあるのですが、典礼の際に女性が歌う事が許されないという制約のため、そのパートは少年によって、つまり、全員男声によって歌われていました。しかし、このボクシャイの場合は最高音域がテナーという、本来の意味での「男声合唱」、かなり禁欲的な響きがもたらされるものとなっています。
例によって、中心となるのは「Litany」と呼ばれる司祭と合唱の掛け合いです。その司祭、いわばソリストを、ここでは指揮者のブブノーが努めています。というより、ボクシャイ自身がそうであったように、「司祭」と「(合唱の)指揮者」というのは同じ人が努めるのが、一つの習慣だったのでしょう。そのブブノーのソロ、もちろんベル・カントというわけにはいきませんが、かなり垢抜けたものであったのは、この手の曲ではラフマニノフのものしか知らないものとしては、ちょっと意外な驚きでした。それは、おそらく曲の作られ方にも関係しているのでしょう。いわゆるビザンチンの典礼音楽といったものよりは、ごく普通のヨーロッパの中心で綿々と続いている「古典音楽」のテイストが、この曲には非常に色濃く反映されているのです。ちょうど真ん中辺で聴かれる「The Creed」などが、そんな軽やかな「合唱曲」の典型的なものでしょう。
そのような、ある種爽やかな印象を持ったのは、ここで演奏している合唱団から、いわゆる「スラヴ的」な泥臭い響きではなく、かなり洗練されたものを求めているであろう姿勢を感じたからなのでしょう。ブダペストで2002年に創設されたという総勢13人の聖エフレム・ビザンチン男声合唱団からは、地を這うような超低音のベースや、叫びに近いテナーが聴かれる事は決してありません。そこにあるのはまるで日本の大学の男声合唱団のようなごく素直な発声から生まれる良く溶け合った響きです。その方面の音楽が好きな方には、喜ばれるものかもしれません。ただ、一応プロフェッショナルな団体とは言っていますが、しばしばテナー系の生の声が聞こえたり、アンサンブルの点で必ずしも充分なトレーニングがなされていないと感じられたのが、少し残念です。
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by jurassic_oyaji | 2005-09-07 19:49 | 合唱 | Comments(0)