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MOZART/Flute Quartets
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Lisa Friend(Fl)
Brodsky Quartet
CHANDOS/CHAN 10932


モーツァルトのフルート四重奏曲は、常に4曲がセットで語られます。LP時代から、この4曲が収録されたアルバムは数多く作られてきました。そしてそれらのアルバムでは、その4つの四重奏曲に番号が付けられていることもありました。もちろん、そんな番号は作曲者が付けたものではなく、後の人が一応作曲されたと思われる年代順に付けたものです。その「年代」の根拠となったのは1964年に改訂されたケッヒェル番号の第6版「K6」です。
そこでは、「1番」はニ長調のK.285、「2番」はト長調のK.285a、「3番」はハ長調のK.285b、「4番」はイ長調のK.298と、1777年から1778年にかけての作品群とされていました。ただ、この中で自筆稿が残っているのは「1番」と「4番」だけで、その他の作品は正確な作曲年代も、さらにはモーツァルト本人が作ったものであるのかも疑問がもたれています。実際、「4番」に関しては使われた紙の鑑定とか、この曲の中で引用されている作品(すべての楽章に「元ネタ」があります)が作られた年代などから考えて、もっと後期、1786年に作られたのではないか、という説が有力になっていました。
それでも、相対的な順番は変わらないので、この番号自体はそれなりに意味のあるものとして、長年使われ続けていたのですね。ところが、今回の2016年3月に録音されたばかりの最新のアルバムでは、曲の並びが番号順ではありませんでした。「1番」、「2番」、「4番」、「3番」と、後半の2曲の順番が入れ替わっていたのです。別に、CDの曲順は作曲順に従わなければいけないという規則があるわけではなく、聴いた時の心地よさなどを考慮して順番を入れ替えるようなことはザラにあるので、これもそんなものかな、と思ったのですが、ライナーノーツを読んでみると、実際に「3番」の方が「4番」より後に作られていたと、そこでは述べられていたのです。
その根拠は、この曲の第2楽章。これは、1781年に作られた有名な12の管楽器とコントラバスのためのセレナーデ「グラン・パルティータ」(K.370a)の第6楽章の変奏曲と全く同じもの(調は違います)なので、かつてはこのフルート四重奏曲がその原曲だと思われていて、それ以前の作品だということになっていたのですが、どうもそれは違っていたようなのですね。現在では、この四重奏曲は1786年か1787年に作られたという説が有力なのだそうです。しかも、この曲の自筆稿も存在してはおらず、わずかに第1楽章のスケッチが残っているだけでしたから、それを元に、モーツァルト以外のだれかがその楽章を作り、さらに第2楽章としてセレナーデの変奏曲を「編曲」して付け加えたのだ、とも言われていますからね。まあ、世の中、研究が進むと知りたくなかったようなことまで明らかになってしまうというのは、よくあることです。
ここでフルートを演奏しているのはリサ・フレンド、まるでモデルのような金髪の美人です。アメリカでルネ・シーバート(ジュリアス・ベイカーが首席の頃のニューヨーク・フィルの2番奏者)、イギリスでスーザン・ミラン、フランスでアラン・マリオンに師事したという、華やかな経歴を持っています。多くのオーケストラと共演したこともありますし、なんでもライザ・ミネリとの共演、などというすごいことまでやっているそうです。
ただ、この四重奏曲の録音を聴くと、なんとも雑な印象が残ります。とても軽やかでキラキラした独特のセンスは持っているのですが、いまいち詰めが甘いというか、なにか肝心なことが抜けているのではないか、という気がしてしまうのです。一番気になるのがピッチの悪さ。特にフレーズの終わりで常に音が低めになってしまうという癖が結構目立ってしまいます。ソリストとしてコンチェルトを吹きまくる分にはそんなに目立たないのかもしれませんが、このようなアンサンブルではそれは致命的です。知名度も高い曲ですし。

CD Artwork © Chandos Record Ltd

by jurassic_oyaji | 2017-04-22 21:11 | フルート | Comments(0)