おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
BACH/St. John Passion
c0039487_20205484.jpg

James Gilchrist(Ev), Neal Davies(Jes), Sophie Bevan(Sop)
Iestyn Davies(CT), Ed Lyon(Ten), Roderick Williams(Bas)
Stephen Dleobury/
The Choir of King's College
Academy of Ancient Music
CHOIR OF KING'S COLLEGE/KGS0018(hybrid SACD)


ケンブリッジのキングズ・カレッジ合唱団の起源は15世紀までさかのぼるのだそうです。それが、レコードなどによって広く知られるようになったのは、1957年から1974年まで音楽監督を務めた故デイヴィッド・ウィルコックスの時代あたりからでしょうか。ウィルコックスの引退後にそのポストを譲り受けたフィリップ・レッジャーの後任として、1982年に音楽監督に就任したのが、現在のスティーヴン・クリーブリです。このDleoburyという方の日本語表記は「クレオベリー」や「クロウベリー」など何種類かあるようですが、どうやら「クリーブリ」というのが最も近い発音のようですね。コーヒーには入れません(それは「クリープ」)。例によって、こういう「正しい」表記が今までのものと置き換わることはめったにありませんが。
今回の「ヨハネ」は、キングズ・カレッジの2016年のイースターでのライブ録音です。クリーブリとキングズ・カレッジ合唱隊が演奏したバッハの受難曲は、「マタイ」が1994年、「ヨハネ」が1996年のそれぞれやはりイースターでライブ録音されたCDが、BRILLIANTのバッハ全集としてリリースされていました。さらに、こちらにあるように、「ヨハネ」ではCDとは別テイクのDVDも、別のレーベルから出ていました。ここで興味を引いたのは、CDでは普通の新バッハ全集の演奏の後に、1725年の第2稿で新たに作られた曲が演奏されていたことでした。それだけではなく、DVDでは最初からその第2稿で演奏されていたのです(厳密には、第2稿そのものではありませんでしたが)。クリーブリは、ちょっと詰めが甘いところはありますが、「ヨハネ」の異稿についても彼なりのアプローチを行っていたのでした。
ですから、今回彼らのレーベルで初めてバッハの作品を取り上げた時に、その「ヨハネ」のバックインレイにこんなことが書いてあれば、ちょっと期待をしてしまいます。
ここには、確かに「1724年稿」、つまり「第1稿」によって演奏されている、と書かれていますね。しかし、その次の行には「ベーレンライター社の新バッハ全集」とも書いてあります。この2つの言葉は、全く異なる別の楽譜を指し示すはずなのですが、それが並べられているというのはいったいどういうことなのでしょう。
一つの可能性として、「新バッハ全集」の「付録」が関与しているのではないか、という考え方があります。この楽譜の後半には「新バッハ全集」では採用しなかった「初期稿」と「第2稿」と「第4稿」などの情報が収められているのですよ。ですから、それを使えば、「1724年稿」で演奏することも不可能ではありません。同じようにクリーブリがこの「付録」を見ながら演奏していたのが、先ほどのDVDでの「第2稿」だったのですからね。
ところが、このSACDを聴いてみると、最初の10曲は「1724年稿」ではなく「新バッハ全集」でした。もちろん、「付録」ではなく本体を使っての演奏です。つまり、「1724年稿」という表示は全く事実無根、もっと言えば、「1724年稿」が聴きたくてこのアルバムを買った人にとっては、「偽装表示」という「犯罪行為」にほかなりません。
ここで演奏しているアカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックのメンバーとエヴァンゲリストのギルクリストは、2013年に「1724年稿」のようなものを実際に演奏しているのに、この間違いには気づかなかったのでしょうか。
この合唱団の場合、メンバーの入れ替えが激しいので時期によっての出来不出来の差が大きいのですが、今回はどうなのでしょう。とりあえず1996年の録音と比較してみると、こちらの方は限りなく「不出来」に近いようでした。トレブルは仕方がないとして、アルトのパートがかなり悲惨なんですね。それは、コラールなどではごまかすことは出来ても、「Wir haben ein Gesetz」とか「Lasset uns den nicht zerteilen」といったポリフォニーで各パートがソロになると、隠しおおせなくなくなってしまいます。

SACD Artwork © The Choir of King's College, Cambridge

[PR]
by jurassic_oyaji | 2017-05-27 20:22 | 合唱 | Comments(0)