おやぢの部屋2
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SIBELIUS/Kullervo, KORTEKANGAS/Migrations
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Lilli Paasikivi(MS), Tommi Hakala(Bar)
Osmo Vänskä/
Ylioppilaskunnan Laulajat(by Pasi Hyökki)
Minnesota Orchestra
BIS/SACD-9048(hybrid SACD)


シベリウスには7曲の交響曲がありますが、「交響曲第1番」が作られる7年ほど前に完成した「クッレルヴォ」というタイトルの2人のソリストと男声合唱とオーケストラのための作品も、時には「クッレルヴォ交響曲」と呼ばれて交響曲の仲間として扱われることもあります。
「クッレルヴォ」というのは、おなじみ、北欧叙事詩の「カレヴァラ」に登場する人物の名前です。その悲劇の主人公が描かれた部分をテキストに使っていますが、そのお話は主人公が鍛冶屋に奉公に出されるとか、死んだはずの妹が実は生きていて、それとは知らずに関係を持ってしまうとか、なんだかワーグナーの「指環」とよく似たエピソードが登場します。このあたりのルーツは一緒なのでしょうね。そんなテキストの中のクッレルヴォのセリフをバリトンが歌い、クッレルヴォがナンパする女性3人のセリフをメゾ・ソプラノが歌います。3人目の女性が、実は妹だったんですね。そして、それ以外の情景や感情の描写が、男声合唱で歌われます。ですから、基本的にこの作品は劇音楽としての性格を持っています。ただ、全く声楽の入らない楽章もあって、それぞれがソナタ形式をとっていたり、スケルツォ的な性格を持っていることから、交響曲としての要素もあります。ここには、後のシベリウスの音楽のエキスが、数多くちりばめられています。ちょっと辻褄があわないところはあるにしてもこの涙を誘う物語は、まるで大河ドラマのような(@新田さん)壮大な音楽に彩られて、深い感動を誘います。
この作品は完成直後の1892年4月に作曲家自身の指揮によって初演され、大好評を博しました。しかし、彼の生前には出版もされず、全曲の演奏も長い間行なわれませんでした。ブライトコプフから楽譜が出版されたのは、1966年のことです。日本で初演されたのは1974年、渡邉暁雄指揮の東京都交響楽団による演奏でした。余談ですが、今年はフィンランド独立100周年ということで、同じ東京都交響楽団が11月にハンヌ・リントゥの指揮でこの作品を演奏するのだそうです。もちろん、2015年には新田ユリさん指揮のアイノラ交響楽団も演奏していたのは、ご存知の方も多いことでしょう。いずれにしても、演奏される機会は非常に少なく、録音でも北欧系の指揮者以外でこの曲を取り上げているのはコリン・デイヴィスとロバート・スパノぐらいしかいないのではないでしょうか。
そんな珍しい曲を、2度録音してくれた人がいます。それは、フィンランドの指揮者オスモ・ヴァンスカ。1回目は2000年のラハティ交響楽団との録音、そして今回2016年のミネソタ管弦楽団との録音です。どちらもレーベルは同じ、さらに、合唱団(YL=ヘルシンキ大学男声合唱団)とメゾ・ソプラノのソリストまで同じです。演奏時間もほぼ同じ、第5楽章だけ、今回の方が1分ほど早くなっていますが、別に聴いた感じそんなに違いはありません。ただ、録音は今回の方がワンランク上がっています。それに伴って、合唱の表情などがより生々しく伝わってきているでしょうか。
これが演奏されたのは、フィンランドから北アメリカへの移住が始まってから150年を記念するコンサートでした。そこでは、ミネソタ管弦楽団とヴァンスカが1955年生まれのフィンランドの作曲家オッリ・コルテカンガスに委嘱した「移住者たち」という作品が初演されています。どこかの国の大統領や総理大臣ではありませんよ(それは「異常者たち」)。この作品では、その「移住150周年記念」というテーマの他に、このシベリウスの「クッレルヴォ」との相似性も追及されていると、作曲家は言っています。ここでも、男声合唱は大活躍、ア・カペラの合唱だけで演奏される楽章もあります。
そして、最後にもう1曲、シベリウスの「フィンランディア」でもこの男声合唱団があのテーマを高らかに歌い上げています。

SACD Artwork © BIS Records AB

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by jurassic_oyaji | 2017-06-08 20:38 | 合唱 | Comments(0)