おやぢの部屋2
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MOZART/Requiem, BRUCKNER/Motets
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Max Emanuel Cencic, Derek Lee Ragin(CT)
Michael Knapp(Ten), Gotthold Schwarz(Bas)
Peter Marschik/
Wiener Sängerknaben, Chorus Viennensis
Symphonieorchester dere Wiener Volksoper
CAPRICCIO/C8018


1994年に録音されて、1995年にリリースされたCDが、このカプリッチョ・レーベルの「ENCORE(もういっちょ)」シリーズとしてリイシューされました。ウィーン少年合唱団など、ウィーンの演奏家によるモーツァルトの「レクイエム」です。
ウィーン少年合唱団はおなじみの合唱団ですが、少年合唱ですから変声期を迎えて「少年」でなくなれば退団しなければなりません。このあたりの悲哀を描いた映画なども数多く作られています。ただ、「少年合唱」は辞めても「合唱」まで辞めることはないわけで、そんなウィーン少年合唱団の「卒業生」たちを集めて1952年に作られた合唱団が、ここで少年たちと一緒に歌っている「コルス・ヴィエネンシス」という男声合唱団です。ウィーン少年合唱団は基本的に児童合唱、つまり女声合唱のパートを歌う合唱団ですが、混声の曲を歌う時には、このコルス・ヴィエネンシスが男声パートを担当することになります。
さらに、「大人」になっても「少年」の声を残せた人もこの合唱団にはいました。そんな、奇跡とも言えるソリストが、カウンターテナーのマックス・エマニュエル・ツェンチッチです。彼は、ソプラノの音域まで歌うことのできるカウンターテナーとして、世界中で活躍していますが、ここでも「レクイエム」のソプラノ・ソロを歌っています。
普通に、大人の声の歌手として大成した人ももちろんいます。ここでのテノール・ソロ、ミヒャル・クナップは、やはりウィーン少年合唱団の元団員、そしてバスのソリスト、ゴットホルト・シュヴァルツは、ライプツィヒのトマス教会合唱団の元団員です。
アルト・ソロも、アメリカのカウンターテナー、デレク・リー・レイギンが歌っています。つまり、この「レクイエム」は、声楽パートは全てオトコによって演奏されているという、かなりユニークな陣容なのです。
もちろん、指揮をしているのは当時のウィーン少年合唱団の指揮者、ペーター・マルシクです(彼は1991年から1996年までこのポストにありました)。そんなラインナップだと、ちょっとユル目のいかにもウィーン風(それがどういうものかはよく分かりませんが)の演奏を思い浮かべてしまいますが、実際は予想を全く裏切られた、とても締まりのある演奏だったのには、ちょっとびっくりしてしまいます。確かに少年合唱のパートは、「大人」の合唱のパートに比べるとちょっと消極的な歌い方と表現ですが、何か「大人」たちがしっかりバックを固めて励ましているような感じがして、とてもまとまりよく聴こえます。
指揮者が目指している音楽も、とてもメリハリがきいていて新鮮です。使っている楽譜はジュスマイヤー版ですが、その中に指揮者の主張もしっかりと織り込んでいます。たとえば、「Rex tremendae」の6小節目で合唱と管楽器だけが付点音符で書かれているところは、その前の弦楽器のリズムと合わせて複付点音符で演奏していますし、「Confutatis」の13小節目では、テナーの「付点四分音符+八分音符」というリズムを、ベースと一緒になるように「複付点四分音符+十六分音符」にしています。
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ただ、ソリストはツェンチッチだけが、ちょっと異様なビブラートとオーバーアクションで一人だけ浮いてしまっています。
うれしいことに、このアルバムではブルックナーのモテットが3曲カップリングされています。これは、今回のリイシューでのコンパイルではなく、初出のアルバムがすでにそういうカップリングで、同じ時期に同じ場所で録音されています(モーツァルトの「Ave verum corpus」まで入っています)。ブルックナーはア・カペラですから、合唱がもろに聴こえてきますが、ここでも少年のパートを支える大人のパートが素晴らしい演奏を聴かせてくれています。7声の「Ave Maria」では、3声の少年がピアノで始まってフォルテまで盛り上がった後、そこにピアニシモで4声の大人が入ってくる部分などは、ゾクゾクするほどの美しさです。

CD Artwork © Capriccio

by jurassic_oyaji | 2017-07-04 23:15 | 合唱 | Comments(0)