おやぢの部屋2
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ジャジャジャジャーン!
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田中マコト著
講談社刊(マガジンエッジコミックス KCME21/76
ISBN978-4-06-391021-6/978-4-06-391076-6


久しぶりの本格クラシックマンガ、まずは「帯」に注目です。こういうものにはよく「推薦コメント」というものがあって、関係業界の名士による歯の浮くようなコメントが読めるようになっているものですが、ここにはそういうものは一切なく、代わりに、「クラシック業界関係者黙殺!?/いくつもの推薦コメント依頼に返信まったくなし!(第1巻)」とか「クラシック業界関係者激怒!?/推薦コメント依頼にNGの嵐!(第2巻)」といった、とてもインパクトのあるコメントが並んでいます。いや、ヘタな太鼓持ちコメントより、こちらの方がずっと読者の食指を誘うものになっていますね。
このマンガは、少年マガジンエッジ(アダルト誌ではありません・・・それは「少年マガジンエッチ」)に2015年から2017年にかけて連載されたもので、単行本は第1巻が去年の7月、第2巻が今年の7月に刊行されました。もう連載は終わっているので、この2巻で完結のようです。
作者の田中さんは、女性です。彼女はそもそもミュージカル歌手を目指して武蔵野音楽大学音楽学部声楽学科に入学するのですが、まわりの人たちのあまりのレベルの高さに、音楽家への道を断念しかけます。そんな時に「のだめカンタービレ」の作者、二ノ宮知子さんが大学に取材に来て、彼女は「その姿に触発されて」マンガ家を志すようになったのだそうです。それから修行に励み、10年以上の下積みを経て、晴れて世の中に認められるようにようになったというのですから、経歴自体がすでにマンガですね。そうか、「のだめ」ってそんな昔のことだったんですね。
そんな、音大卒マンガ家が世に問うた、クラシック・ギャグマンガが面白くない訳がありません。ギャグそのものはかなりスベってはいるものの、まずはデフォルメされまくっている大作曲家の「絵」には感動に近いものがあります。特に秀逸なのはシューベルトと滝廉太郎。シューベルトの顔の汗と、右手は最高ですね。そして、滝廉太郎。先ほどの帯コメントが事実だったとしたら、推薦コメントが断られたのは絶対この人の描かれ方のせいでしょう。なんたって、「日本のクラシック音楽の開祖」と祀られて、この国の音楽アカデミズムの中枢ではこんな銅像まで飾られているという人ですから、これはまずいです。だから、面白いんですけどね。
とは言っても、やはり先輩格の「のだめ」同様、気になるところはたくさんあります。
そもそも、毎回のタイトルの「第〇楽章」としたあたりで、普通のクラシックファンの感覚とは微妙にずれていることを感じないわけにはいきません。最後は「最終楽章」で何の問題もありませんが、そのひとつ前が「第21楽章」ですって。このぐらいの楽章数の作品がないわけではありませんが、それはかなり特殊なものですからね。
楽器はピアノ以外はほとんど登場しないので大丈夫だと思っていると、そのピアノでいきなりこんなのが出てきました。なんか、ボディのデッサンがおかしいですね。
それは、こちらの天板と比べると、はっきり分かります。
校歌を作るエピソード(第4楽章)では、モーツァルトくんが作った「怒れ!!」という歌詞が登場しますが、これは「レクイエム」の中の「怒りの日」を元ネタにしたものですね。それはなかなか面白いのですが、それに対するベートーヴェンのネームから、それが旧約聖書からの「引用」であることが示唆されています。しかし、このテキスト自体は聖書から取られたものではありませんから、これはベートーヴェンの勘違い。
そして、音楽大学が登場する「第17楽章」では、滝廉太郎が「音楽大学と銘打っているだけでも10校以上、一般大学の音楽科なども含めたら40校以上はあります」と言っているのも事実誤認。こちらを見ると、日本には優に100校以上の「音楽大学」があることが分かります。滝くんはWIKIのいい加減なデータを鵜呑みにしたのでしょう。

Book Artwork © Kodansha Ltd

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by jurassic_oyaji | 2017-07-27 20:40 | 書籍 | Comments(0)