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SHOSTAKOVICH/Syphony No.7 "Leningrad"
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Andris Nelsons/
City of Birmingham Symphony Orchestra
ORFEO/C 852 121 A(hybrid SACD)


我々消費者が入手する輸入CDの中には、ストアが直接輸入しているアイテムもなくはありませんが、ほとんどのものは専門のCD輸入業者というものがいて、そういうストアは、そこを通して品物を入手しています。ですから、どんなストアの店頭にも、同じような新譜が並んでいるはずです。
最近では、そういうリアル・ストアではなく、ほとんどネット通販で購入するようになっていますから、新譜に関しては、そういう輸入業者がストア向けに送っているアイテムの情報がネットには掲載されますから、それを頼りに目星をつけて購入することになります。
ただ、レーベルによってはそのような輸入業者が、ある日突然に別の業者に変わってしまうことがあります。ふしだらな女性が離婚してすぐ再婚するようなものですね。もちろん、そんな恥ずかしいことはあまり大っぴらにはしないものですから、そんな業者の変更も消費者には知らされることはなく、買ってみたらいつの間にか別のパートナーになっていた、と気づくだけのことです。
今回のORFEOレーベルもそんな感じで、ごく最近輸入業者が変わっています。この、ネルソンスが指揮をした「レニングラード」は、その「前のパートナー」の時、2012年にリリースされたものでした。それを引き継いだ「新しいパートナー」は、ネルソンスがもうすぐボストン交響楽団と来日することに目を付けて、それに絡んでひと儲けしようと、こんな昔のアイテムをもう1度リリースしようとしました。ただ、それだけでは何のインパクトもないので、SACDで発売するために、わざわざ日本での販売だけのためにレーベルに新たにハイブリッドSACDを作ってもらったのだそうです。そんなに売れる見込みがあるのでしょうか。まあ、日本のファンは音にうるさい人が多いので、それなりの需要があるのでしょう。
ただ、それが「本物」のSACDであるかどうかというチェックは必要です。実際に、かなりの大レーベルでも、オリジナルの録音はCDのフォーマットだったものを、見かけだけハイレゾ風にアップ・サンプリングを行って、平気でSACDとして販売しているところがありますからね。
そこで、前のCDは持ってなかったので、今回のSACDのCD層とSACD層を聴き比べてみました。確かに、弦楽器のトゥッティの音は、SACDの方がよりテクスチャーがはっきり感じられるものになっていますし、高音も無理なく伸びていますから、CDとははっきり異なっていることが分かります。ひとまず、きちんとしたハイレゾ音源が提供されていることだけは確かなのではないでしょうか。少なくとも、これを聴いてCD特有の余裕のない音にストレスを感じることはありません。ただ、これはあくまで個人的な感想ですから、ブックレットに正確な録音フォーマットが記載されていない限り、真実は闇の中であることに変わりはありません。
現在ではボストン交響楽団とライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団という、2つの超Aクラスのオーケストラのシェフとなって、いわば指揮者としての頂点を極めた感のあるネルソンスですが、これが録音された2011年当時は、サイモン・ラトルという超大物が去ったあとのバーミンガム市交響楽団を引き継いだ2人目の無名の指揮者(1人目はサカリ・オラモ)という程度の認識しかなかったのではないでしょうか。そんな時に彼が見せたショスタコーヴィチの解釈は、なんとしても自己の存在を強烈に印象付けたいという若者の気負いがこもったものでした。彼は、第1楽章の延々と続く同じテーマの繰り返しを、すでにその時点で「おふざけ」として聴かせようとしています。それは、バルトークが行った挑発(それこそが、ショスタコーヴィチが仕掛けた挑発だったはず)を真に受けた、愚かな行動です。
輸入業者の思惑とは違って、この新装なったSACDは、よりクリアな音でそんな「若気の至り」の傷口に擦り込まれた塩のようなものになっていました(どうでしお?)。

SACD Artwork © ORFEO International Music GmbH

by jurassic_oyaji | 2017-09-09 22:19 | オーケストラ | Comments(0)