おやぢの部屋2
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CAPLET/Le miroir de Jésus

Hanna Schaer(MS)
Isabelle Moretti(Hp)
Quatuor Ravel
Bernard Tétu/
Solistes des Choeurs de Lyon
ACCORD/476 742 8



アンドレ・カプレの「イエスの鏡」については、大分前に1996年に録音されたMARCO POLOをご紹介したことがありました。今回のものはこの曲の世界初録音である1992年のACCORD盤、長らく廃盤だったものが、晴れてUNIVERSALから再発となりました。
カプレという人は、ご存じのようにドビュッシーと同時代の作曲家です。他の作曲家に対しては常に厳しい批評をしていたドビュッシー(ヴァーグナーに対する当てつけは有名ですね)ですが、このカプレには一目置いていたと言いますから、何か共通したセンスを彼の中に見出したのでしょうね。その結果、彼らの共同作業として、ドビュッシーのピアノ曲のオーケストレーションや、逆にオーケストラ曲のピアノリダクションが生まれることになります。しかし、カプレの作風はドビュッシーとは明らかに異なる方向を向いていました。絵画に喩えれば、ナイフで厚塗りされた油絵ではなく、柔らかい絵筆で描かれた水彩画、それも色数のごく限られたもののような肌触りでしょうか。しかし、第一次世界大戦に義勇兵として従軍した際に被った毒ガスが元で、46歳という若さで亡くなったということもあって、その作品は殆ど知られることはありませんでした。
この「イエスの鏡」は、その不幸な戦争の直後に作られたものです。この曲も、1924年にあのクレール・クロワザのソロによって初演されたものの、長らく忘れ去られていたものが、この録音によって再び脚光を浴びることとなったのです。最近は他のCDも多数出ているようですね。
曲は、受胎告知から聖母被昇天という聖母マリアの生涯にイエスの生涯を映し出した、アンリ・ゲオンの15編から成るソネット(14行詩)がテキストになっています。その15編は5編ずつ、「喜びの鏡」、「哀しみの鏡」、「栄光の鏡」という3つのグループに分けられ、それぞれの最初に楽器だけによる「前奏曲」が加えられ、計18曲で出来上がっています。楽器は、元々は弦楽四重奏とハープ1台という編成、そして、9人編成の女声合唱が加わります。この録音ではさらにコントラバスが加わって低音が補強されています。このあたりは、作曲者にはそれほどのこだわりはなかったようで、現にリヨンで行われた初演の時には広い会場に合わせてオーケストラと大きな合唱、そしてハープが2台用いられたと言いますから。先ほどのMARCO POLO盤でも弦楽合奏になっているのは、そのせいなのかもしれません。
殆どレシタティーヴォに近いメゾのソロ(最後の曲では、本当の「語り」になっています)をバックで支えるこれらの楽器の雄弁さは、注目に値します。それは、全く異なる情景を描いているそれぞれのパートのキャラクターを見事に知らしめるもの、特にキリストの受難がテーマの「哀しみ~」での深い表現には胸を打たれます。中でも、ハープによる重たい歩みの描写は感動的です。このグループの前奏曲も、この演奏のような完璧なユニゾンで弾かれると、まるでアルヴォ・ペルトのような世界が広がるのが、素敵(「癒しの鏡」)。
この作品での女声合唱の扱いは、例えば各々の曲のタイトルを装飾的に読み上げたり(このアイディア自体は非常に魅力的)、メゾのソロを盛り上げたりと、前面に出てくることはありません。そんな、ちょっと欲求不満を感じた合唱ファンには、もう少し前に作られた「野の墓碑銘」という、7分程度のア・カペラ曲のカップリングが嬉しいのでは。ここには、カプレ独自の世界が柔らかい女声合唱で広がるのを存分に味わうことが出来ます。
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by jurassic_oyaji | 2005-09-23 19:48 | 合唱 | Comments(3)
Commented by mottenin at 2005-09-23 22:20
近年、アコールの再発が活発になってきましたね。
テテュの合唱団の録音の中では、フォーレなどよりもアコールのカプレに魅力を感じています。
姉妹盤(?)に収録されている3声のミサ曲の演奏がなかなかよいのも、合唱ファンとしては嬉しいところです。
(Accord: 465 813-2)
Commented by jurassic_oyaji at 2005-09-24 10:47
これはもう廃盤ですってね。残念・・・
HORTUSから出ているVincent Paulet(Suhubiette指揮)のレビューが出来ていますので、そのうち公開します。
Commented by mottenin at 2005-09-24 17:09
廃盤になりましたか。2000年再発なのに。足が速いですね。渋谷あたりの店頭にはありそうな気がするんですが。残念です。
Paulet は、 De profundis (Hortus: 036) ですね。
表題曲が気に入ってます。レヴューを楽しみにしております。