おやぢの部屋2
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BEETHOVEN/Symphonies No. 1 & 4
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Rafael Kubelik/
London Symphony Orchestra
Israel Philharmonic Orchestra
PENTATONE/PTC 5186 248(hybrid SACD)


クーベリックが1970年代に、ベートーヴェンの9つの交響曲を、それぞれ別のオーケストラを使って録音したという、とても今では考えられないような企画は、現在でもその存在価値を失ってはいません。もちろん、最初はLPのボックスでリリースされたものでした。それは繰り返し聴いたのですが、やがてCDが登場すると、あまりにノイズの多いLPには見切りをつけ、それまで持っていたLPをほとんど処分してしまいましたね。当時は全くノイズのないクリアなCDの音を聴いて、愚かにももはやLPの時代は終わったと本気で思ってしまったのですね。取り返しのつかないことをしてしまったと思い知らされるのは、このベートーヴェンの交響曲全集がCDボックスでリイシューされた時でした。それは、LPとは似ても似つかない雑な音だったのです。結局、かつて聴いていた音に出会えるのは、DGによってリマスタリングが行われたSACDが出るまで待たなければなりませんでした。
それは、しかし、第6番「田園」1曲だけでした。その、CDとは全く異なる繊細な音を聴くにつれても、全部の交響曲がSACDで出る時など、果たしてあるのだろうか、とも思ってしまいましたね。その、ユニバーサルのシングル・レイヤーのSACDは、あまりにも高額でしたしハイレゾの配信もなかったようですから。
そうしたら、なんとPENTATONEから、全集からの何曲かが分売でリリースされるようになりました。おそらく、これは全曲分がすでに用意されているはずです。このレーベルは、基本的にPHILIPSの昔の音源をSACDにしてきていましたが、今では同じUNIVERSAL系列となったDGの音源も扱うようになっています。そんな中に、このクーベリックの全集が選ばれたということに、喜びを隠せません。
そこで、まず初回リリースのこのロンドン交響楽団との「1番」とイスラエル・フィルとの「4番」がカップリングされたアルバムを聴いてみることにしました。それぞれのオーケストラは、いつも演奏している本拠地のホールで録音するというのが、この一連のレコーディングのコンセプトなのですが、ロンドン交響楽団はロンドンのブレント・タウン・ホールなのにイスラエル・フィルはテルアビブのホールではなく、ミュンヘンのヘルクレス・ザールで録音されています。
しかし、このSACDを聴いた時には、これはDGの音ではないのでは、と感じました。この交響曲全集では全ての録音はハインツ・ヴィルトハーゲンという、有名なギュンター・ヘルマンスと並んでこの時代のDGを代表するエンジニア(特にピアノ録音を数多く手がけている人)が担当しています。彼らは、このレーベルのトーン・ポリシーをしっかり継承していて、彼らの録音からはいかにもドイツ的な鋼のように強靭なサウンドが体験できます。もちろん、それはLPでも、そしてCDでさえもしっかり感じることが出来ました。それが具体的にどのようなものかは一言で述べられるようなものではありませんが、個人的にはオーケストラの録音では管楽器の音の分離の良さと、トゥッティの弦楽器の豊かなエネルギー感に特徴があるような気がします。
しかし、ここで聴こえてきた音は、とても繊細で魅力にあふれるものではあったのですが、そこからは強靭さがかなり失われているように感じられてしまったのです。こういうサウンドは、DGではなくかつてのPHILIPSで味わえたもののような気もしました。実際、このレーベルでリマスタリングを行っているのは、そのPHILIPSの元エンジニアが作ったPOLYHYMNIAというチームですからね。彼らは、まさにPHILIPSのトーン・ポリシーに則って、DGの音をPHILIPSの音に変えてしまっていたのです。
以前この逆のパターンを、こちらで体験したことがありました。レーベル固有の音まで変えてしまうこういうリマスタリングってなんなんだ、と思ってしまいます。
ま、それでもこれはオリジナルとは別の味で楽しめますから、結局全部入手することになるのでしょう。

SACD Artwork © Pentatone Music B.V.

by jurassic_oyaji | 2017-09-23 21:01 | Comments(0)