おやぢの部屋2
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Rock Swings



Paul Anka
VERVE/475102US盤)
VERVE/602498826003
EU盤)
ユニバーサル・ミュージック/UCCU-1068(国内盤)


ポール・アンカといえば、私達はまず1950年代から1960年代にかけてまさに一世を風靡したアイドル的なポップス・シンガーとしての姿を思い浮かべることでしょう。1957年、16歳の時に自作の「ダイアナ」という曲でいきなり大ヒットをとばした彼は、その歌詞にあるような「早熟な若者」というイメージで、数多くのヒット曲を世に送ります。しかし、そのような単なるアイドルで終わらなかったのが、彼のすごさです。1962年に公開された映画「史上最大の作戦The Longest Day」の中でミッチ・ミラー合唱団によって歌われた同名の主題歌は、彼にソングライターとしての確かな能力が備わっていることを証明してくれたのです。さらにその後にフランク・シナトラのために書かれた「マイ・ウェイ」こそは、彼の作品(この曲については作詞のみの担当)として永遠の命を持ちうる名曲となりました。
もちろん、彼は現在までとぎれることなく歌手としての活躍は続けています。ほとんど「歌手生活50年」みたいなとてつもないキャリアを誇っているわけですが、デビューが若い時だったせいでしょうか、実はまだ60代半ば、まだまだバリバリの現役アーティストなのです。
そんなポールの最新作は、タイトルそのもの、ロックの名曲をスウィング・ジャズでカバーしようという試みです。ボン・ジョヴィ、ヴァン・ヘイレン、エリック・クラプトンあたりの「王道」だけではなく、ニルヴァーナのような「オルタナティブ」までにも挑戦しようという姿勢には、並々ならぬ意欲が感じられます。
最初の曲、ボン・ジョヴィの「イッツ・マイ・ライフ」が始まったとたん、ここでポールたちが拠り所にしたものは、スウィング・ジャズが持つ力をとことん信じることだったのが分かります。確かにそこにあるのはボン・ジョヴィに違いはないのですが、それは見事に、最初からビッグバンドのために作られた曲のように聞こえてきたのですから。このことは、ヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」という、どう考えてもスイングにはなり得ない曲の場合、鮮烈に印象づけられることになります。あの特異なシンコペーションを持つイントロのリフは、4ビートに置き換えられるやいなや、「ロック」の持つ力強さは消え去り、「ジャズ」という、ある意味大人の音楽に見事に変貌していたのです。もちろん、このような状況下では、ポールの声の中にはデヴィッド・リー・ロスのエネルギッシュなヴォーカルの片鱗も見いだせないのは、当然の成り行きでしょう。
その代わり、私達が気づくのは、元の曲が「ロック」であったときには感じにくかった「歌」としての完成度です。激しいビートの陰に隠れてちょっと見つけそこなってしまったリリシズムが軽快な4ビートの中で蘇るとき、失われてしまったスピリッツ以上の収穫があったと思うのは、私が「大人」になった、あるいはなってしまった証なのでしょうか。
すでに充分「大人」になっていたクラプトンが書いた「ティアーズ・イン・ヘヴン」でさえ、この曲をヴァースから始めるという大胆なアレンジを施したランディ・カーバーの手によって、さらにアダルトな味に変わってしまったことからも、スウィング・ジャズの持つ力には確かに底知れぬものがあることが分かります。そして、ポール・アンカは、その事をいまだ衰えぬ張りのある声で、知らしめているのです。もちろん、少し甘めの声で(それは、「アンコ」)。
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by jurassic_oyaji | 2005-09-26 20:02 | ポップス | Comments(0)