おやぢの部屋2
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PAULET/De Profundis



Véronique Le Guen(Org)
Joël Suhubiette/
Choeur de chambre les Éléments
HORTUS/HORTUS 036



このHORTUSというフランスのレーベル、少し前にデュリュフレのレクイエムを、この同じ演奏家で聴いた時に初めて目にしたものです。実はあのCDも録音されたのは1999年、それがなんの前触れもなく店頭に現れて、そのあとはそれっきり姿を消したまま、という不思議な挙動を見せていたものでした。最近になって、10年以上前に録音されたデサンクロやリストの「Via Crucis」(演奏者は別ですが)などというものが初登場した時には、取り扱いに困ってしまったものです。今さら「新譜」でもありませんし。ただ、デュリュフレでの合唱はちょっと凄かったので、他に取り上げられるものはないかとあちこちあさっていたら、こんなものを見つけました。2004年の録音ですから、まだまだ「新譜」です。
ライナーによると、指揮者のジョエル・スービエット(と読むのでしょうか)は、「シャペル・ロワイヤル」、「コレギウム・ヴォカーレ・ヘント」、あるいは「レ・ザール・フロリッサン」といった、HARMONIA MUNDIレーベルでお馴染みの合唱団に長いこと所属、また、フィリップ・ヘレヴェッヘの助手を務めるなどして、合唱指揮者としての腕を磨いてきた人なのだそうです。1997年に、自分の合唱団として、この「レ・ゼレマン室内合唱団」を結成、このレーベルに限らず録音を行ったり、最近ではオペラ指揮者としても活躍しているとか、いずれ、もう少しメジャーなステージで脚光を浴びることもあるかもしれませんね。
1962年生まれの作曲家、ヴィンセント・ポーレは、この、スービエットたちによる合唱曲2曲と、オルガンソロを4曲収録したCDが、デビューアルバムとなります。もちろん、私のお目当ては合唱曲なわけですが、タイトルにもなっている例の詩編129「深き淵より」というア・カペラ曲は、まさに期待通りの作品、そして演奏でした。切れ目なく続く3つの部分から成るこの曲は、冒頭のベースによる暗く深い音色で、まず聴き手を惹き付けます。個々の歌手の声ではなく、あくまでマスとして聞こえてくるその響きは、とてつもない存在感を持っていたのです。それが、型どおりテナー、アルト、ソプラノと重なっていく時に味わえる、「次はどんな音色が加わるのだろう」というちょっとした期待感には、堪えられないものがあります。そこに、ほんの少しだけ期待を裏切るという絶妙のさじ加減で新しいパートが入ってくるのですから、たまりません。作曲家はここで意図して不協和音、というよりは、完璧に「間違った」音を用意しているのですが、その扱いも素晴らしいものです。そこからは、ちょっとアヴァン・ギャルドを気取った、その実オーソドックスな作風が透けて見えてきます。次の部分は、まるでリゲティの「ルクス・エテルナ」のようなクラスターの世界、そして最後の部分は、同じパターンの繰り返しの上に、さまざまなフィル・インがアラベスクのようにからみつくという、ミニマルっぽい世界です。いずれの場面でも、合唱が技術的な破綻を見せることは全くありません。そこにあるのは、作曲家が書いた音符に、肉感的なまでに音としての実体が加わった姿です。デュリュフレで見せてくれた「猥雑さ」は、ここでも健在でした。
もう一つの合唱曲、16世紀の古いスペインのテキストによる「Suspiros」という、弦楽器を伴う作品では、さらに土俗的なエネルギーが加わって、なにやら怪しげな宗教儀式のような風景が広がります。そういえば、このアルバムのサブタイトルは「宗教作品」、しかし、そこにあるのは敬虔な信仰心というよりは、もっと生々しい信条の吐露でした。たっぷり脂ののった(それは「極上のトロ」)。
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by jurassic_oyaji | 2005-09-30 19:22 | 合唱 | Comments(0)