おやぢの部屋2
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MOZART/Don Giovanni








Charles Mackerras/
Orchestra of the Prague National Theatre
YONSEI/YDS-D1006(DVD)



来年2006年は、モーツァルトの生誕250年とかで、またまた大騒ぎの予感、と言うか、もうすでにその前哨戦は始まっています。それに便乗したのでもないのでしょうが、ほんの少し前、1991年のモーツァルトの没後200年(そんなのがありましたね)にちなんだイベントのDVDが、韓国の正体不明のレーベルからリリースされました。マッケラス指揮の「ドン・ジョヴァンニ」が2000円以下という値段で見られるのですからこれはお買い得「待ってました」とばかりに、つい手を出してしまいましたよ。
これは、このオペラが初演されたプラハ国立歌劇場での、記念すべき上演の模様が収録されたものです。プラハには3つほどオペラ劇場がありますが、いわゆる「スタヴォフスケー」と呼ばれるこの劇場は、この催しに合わせて8年間にわたる修復工事を行って、モーツァルト当時の美しい姿に再建されました。作曲者の没後200年にあたるこの年、チェコの大統領ヴァツラフ・ハヴェル臨席の下に行われたこの公演、指揮者のマッケラスがピットに現れてすぐ演奏されたのが、序曲ではなくチェコ国歌だったのには、ちょっと驚かされます。逆に、何の疑いもなくこのようなことが出来るこの国の人たちをちょっと羨ましくも思ったものです。ロイヤルボックスに立つだけで敬意を払えるような元首も、そこで演奏されるべき国歌も持たない私達の国は、何と精神的に貧しいのでしょう。
この歌劇場にとって、「ドン・ジョヴァンニ」は特別な演目であるに違いありません。ですから、ここでマッケラスが用いていたのは、かつてこの地で初演された形、「プラハ版」であることには重要な意味があります。したがって、第1幕でドン・オッターヴィオのアリアが歌われなくても、それで失望するのはお門違いというものです。もっとも、失望という点では、この由緒あるオペラハウスのオーケストラのあまりの酷さを体験してしまえば、他のことには寛容にならざるを得ないのでしょうが。録音の酷さも相まって、このオーケストラの音からはこのような晴れがましい席にふさわしい響きは全く聞こえては来ません。しかし、レポレッロ役のルジュク・ヴェレと、ドンナ・アンナ役のナジェジュダ・ペトレンコについては、そんな我慢をする必要がないほどの完成度の高さを見ることが出来るのは、せめてもの救いでしょうか。「カタログの歌」の引き締まった表現はちょっと聞きものです。ツェルリーナ役のアリス・ランドヴァーも、その美しい容姿はとことん魅力的です。
演出については多くを語りますまい。ドン・ジョヴァンニ役のアンドレイ・ベスチャスニーが、ジャージ姿でリンゴをかじりながら登場することに、何の意味があるというのでしょう。ドンナ・アンナの強姦のシーンが、まるで合意の下での行為のように見えてしまったり、騎士長との決闘でドン・ジョヴァンニ自身も傷を負うというちょっと変わった設定だったとしても、そこで抱く期待感はその後の平凡極まりない進行によって、見事に裏切られてしまうのですから。「地獄落ち」のシーンで意味もなく回転する回り舞台の醜悪なこと。
最も我慢できないのは、その演出をした人が誰なのかを全く知ることが出来ないDVDのパッケージの不親切さです。それだけではなく、音と映像は最初から最後までずれているという編集のお粗末さ、さらに時折見られるドロップアウトと、商品としての欠陥は目を覆うばかり。もう二度と、韓国製のDVDは買うものか、と、堅く心に誓う私でした。
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by jurassic_oyaji | 2005-10-06 19:39 | オペラ | Comments(0)