おやぢの部屋2
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XL/Choral Works for 40 Voices



Arvid Gast(Org)
Simon Halsey/
Rundfunkchor Berlin
HARMONIA MUNDI/HMC 801873(hybrid SACD)



真っ白いジャケットに銀色の「XL」という文字、かなり印象的なデザインには惹き付けられてしまいます。これは、ローマ数字で「40」を表す文字なのですが、同時に「eXtra Large」という意味も持たせてあるという、イギリスの作曲家、アントニー・ピッツの作品のタイトルにもなっています。「40」の声部を持つ「巨大な」作品というと、すぐ思い出されるのが、16世紀に活躍したトーマス・タリスのモテット「Spem in alium」でしょうが、このアルバムはそのタリスの曲をまず収録した上に、それと同じ40の声部をもち、テキストには詩編40を用いるという、とことん「40」にこだわったピッツの2002年の新作を初(おそらく)録音した、というものです。さらに、その大編成のサウンドをきっちり「サラウンド」で体験してもらうために、マルチチャンネル仕様であることが大きく打ち出されたものになっています。ただ、その合唱団の並び方と、それに応じたマイクアレンジが図示されたライナーによって、そんな、いわばサラウンドのデモンストレーションで終わってしまっている底の浅いアルバムのような印象を持たれてしまうのは、もしかしたら演奏家にとっては不本意なことだったのかもしれません。
実際、そんな「際物」であっても仕方がない、という思いで聴き進むうちに、このアルバムの本当のコンセプトは、そんな表面的なものではなかったことが、痛感されることになります。これは、先ほどのタリスだけではなく、グレゴリア聖歌や、パーセル、バッハといったいにしえのオリジナルと、それを素材にして作られた20世紀後半(ピッツは21世紀)の新しい曲を並べて紹介するという、かなりスリリングなものだったのです。
そのバッハでは、「フーガの技法」のコントラプンクト1がオルガンで演奏されたあと、ディーター・シュナーベルによる無伴奏合唱バージョンを聴くことが出来ます。そこには、まるでウェーベルンによる「音楽のささげもの」のような点描的なレアリゼーションによる、ちょっと不思議な浮遊感が漂っていました。そして、もう一つの「バッハネタ」が、なんとあの「Immortal Bach」ではありませんか。このアルバムで初めて聴いた、バッハのコラール(BWV478)を元ネタ(最初に、オリジナルが提示されます)にして、次第に原形をとどめないほどに「壊して」いくという、一度聴いたら忘れられない名曲に、こんなところで再会出来ようとは。しかも、この演奏は前に聴いたものより、その壊し方が徹底されている快演なのですから、嬉しくなってしまいます。
同様の仕掛けは、マーラーの8番で有名な聖歌「Veni, creator spiritus」(最初の「ヴェーニッ!」というのが「千人!」と聞こえることから、この曲は「千人の交響曲」と呼ばれていますね)を素材にしたジョナサン・ハーヴェイの「Come, Holy Ghost」にも見られます。2人のソリストが呼び交う中、8声の合唱は不思議なバックグラウンドノイズを奏でます。終盤では、それはまるでリゲティの「レクイエム」のような様相を見せるのですから、面白くないわけがありません。
いずれの曲に於いても、ベルリン放送合唱団が卓越したテクニックとソノリテで、存分に楽しませてくれたのが、アルバムコンセプト同様あまり演奏に関しても期待をしていなかったことに対する嬉しい裏切りでした。ただ、タイトル曲であるピッツの作品は、いまどき12音やシュプレッヒ・シュティンメではないだろうという、技法的に硬直したものが見られて、ちょっと期待はずれ。
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by jurassic_oyaji | 2005-10-12 20:34 | 合唱 | Comments(0)