おやぢの部屋2
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MOZART/Clarinet Quintet, Horn Quintet, Oboe Quartet


Lorenzo Coppola(Cl)
Pierre-Yves Madeuf(Hr)
Patrick Beaugiraud(Ob)
Kuijken String Quartet
CHALLENGE/SACC72145(hybrid SACD)



クイケン兄弟の次男ジギスヴァルトと長男のヴィーラントがファースト・ヴァイオリンとチェロという外声を担当している「クイケン弦楽四重奏団」、かつてモーツァルトのレクイエムをこの編成で演奏した珍しいCDをご紹介したことがありましたね。今回は、それに比べればいたってまとも、クイケン達のオーケストラ、「ラ・プティット・バンド」の管楽器奏者が参加しているアンサンブルです。
まずは、名曲中の名曲、クラリネット五重奏曲、クラリネットは、これも周知の「ゼフィーロ」のメンバーでもある、ロレンツォ・コッポラです。ただ、ここでコッポラが使っている楽器がちょっとくせ者。ただのクラリネットではなく、「クラリネット・ダモーレ」という聞き慣れない名前だもーれ
左の図を見れば、普通のクラリネットとはちょっと違った形をしていることがお分かりになることでしょう。現代の楽器に比べてキーが少ないのは「古楽器」であることで比較の対象からは外して頂くことにして、注目して頂きたいのは、胴体とマウスピースをつなぐ「ボーカル」と呼ばれる部分と、開口部の形です。ボーカルは少し湾曲していますし、開口部も朝顔型ではなく、ちょうどコール・アングレやオーボエ・ダモーレのような壺状の形をしていますね。そう、まさにこの楽器は、そのオーボエ・ダモーレのクラリネット版なのです。オーボエ・ダモーレが、オーボエより短三度低いA管であるのと同様、この楽器もA管である普通のクラリネットより長三度低いF管になっています(つまり、一回り大きな楽器、ということです)。
そもそも、モーツァルトがこの五重奏曲を作ったのは、友人のクラリネット奏者アントン・シュタードラーのためでした。ただ、シュタードラーがこのクラリネット・ダモーレを吹いていたというわけではなく、彼の楽器は「バセット・クラリネット」という、通常のA管の低音の音域を広げたものですから、ここでのコッポラの選択は、決して「オリジナル」を追求したものではなく、同じ音域を持つ知られざる楽器を使ってみたものだと受け取るべきでしょう。
私が初めて体験したクラリネット・ダモーレの柔らかい音色はとても魅力的なものでした。特にその最低音は、ちょっととってつけたようなバセット・クラリネットのそれに比べて、あくまで他の音域との違和感のない、自然なものです。もちろん、A管用に改竄された楽譜の音ではなくモーツァルトが書いたオリジナルの音型が聞こえてくるのもありがたいもの。協奏曲も、この楽器で聴いてみたい気になってきました。ただ、そのような価値のあるアプローチではあるのですが、この演奏全体を覆っているある種の生真面目さよって、音楽を気軽に楽しめなくなっているような印象を与えられるのは、ちょっと残念です。ラルゲットの一本調子な歌い方も、かなり不満が残ります。
それに比べると、あとの2曲は曲想の違いもあるのでしょうが、いかにもすがすがしい息吹が感じられて楽しめます。あまり聴くことのないホルン五重奏曲は、通常の弦楽四重奏ではなく、ヴィオラが2本という渋い編成、しかし、出てくる音楽はいかにもすっきりしたものです。マデュフのホルンはもちろんナチュラルホルン、時折、「プ」とか「ペ」といった、ゲシュトップで音程を修正した音が混じるのが、何とも言えぬ和やかさを醸し出しています。ボージローのオーボエも、他のメンバーと見事に一体化した呼吸から、確かな「悦び」を伝えてくれています。そこには、先ほどのコッポラのような硬直した音楽ではない、豊かな歌が溢れています。
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by jurassic_oyaji | 2005-10-17 20:30 | 室内楽 | Comments(0)