おやぢの部屋2
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SUMERA/Mushroom Cantata & Other Choral Works



Tõnu Kaljuste/
Estonian Philharmonic Chamber Choir
Tallinn Chamber Orchestra
BIS/BIS-CD-1560



1950年に生まれて2000年に亡くなったという、非常に分かりやすい一生を送ったエストニアの作曲家、レポ・スメラの合唱作品集です。スメラという人は、幅広いジャンルで作品を残しており、例えば「交響曲」なども6曲作っています(全て、この同じレーベルからリリースされています)。そのようなオーソドックスなものだけではなく、コンピューターによる音楽や、電子音と生音を融合させたユニークな作品なども手がけており、映画のための音楽も70曲ほど作っているということです。もっとユニークなのは、1988年、つまり彼が38歳(!)の時から4年間、エストニアの文化大臣を務めていた、というものです。平均年齢60何歳という、どこぞの国の内閣ではとても考えられない人事ですね。もっとも、その国の「象徴」には年齢制限はありませんが(それは「スメラミコト」)。
このアルバムに収められている4つの合唱曲は、いずれもこれが世界初録音となるものばかり、いずれも、スメラの非常に特徴のある作風を反映した、聴き応えのあるものです。彼の作曲様式は、言ってみれば「折衷」ということにでもなるのでしょうか。古典的な和声や対位法はきちんと踏まえた上で、20世紀に我々が獲得することの出来たあらゆる技法を効果的に散りばめるというものです。一見難解に聞こえるようであっても、聴き終わってみれば楽しい思い出が残っているという、極上のエンタテインメントの要素が、どの曲にもしっかりと含まれているのです。
「声と楽器のための協奏曲」は、混声合唱と弦楽合奏のための曲です。「協奏曲」というだけあって、急-緩-急という3つの楽章から成る古典的な構成を持っています。その両端の楽章には、いろいろ難しいことをやっていても、最終的にはリズミカルでハッピーな結末を迎えるという、彼の本質(?)がよく現れています。そして、真ん中のゆっくりした楽章は、まさに彼の先輩であるペルトと非常に似通ったテイストを感じることが出来るという、わかりやすさです。この曲のテキストがブックレットに載っていますが、それは「翻訳不可能」という、エストニア人にしか分からないような世界なのだそうです。逆に、「言葉」ではなく「音」として楽しむという右脳的な聴き方が許されるだけ、親しみやすさは増すことになります。それでも、最後には「カシオペア!」とか「グローリア!」という言葉が連呼されますから、嬉しくなってしまいます。
「あなたの祖国は、長く暗黒にあるかもしれないが」というのは、3分ほどの短いア・カペラ曲。ここでも、さまざまな「技」が楽しめます。
「マッシュルーム・カンタータ」は、フルートとピアノ、そして打楽器を伴う混声合唱のための4楽章の曲です。この楽器編成だと、まるでカール・オルフのような雰囲気が醸し出されてきます。事実、同じようなリズムパターンの繰り返しなどは、明らかにこの周辺の作曲家の影響でしょう。フルートの使い方が効果的、最初はただのオブリガートだったものが、次第に超絶技巧になっていくのは見物です。
最後の曲は、30分近くかかる長大な「海からの島の乙女の歌」。元々ダンスとのコラボレーションのために作られたものですが、そのドラマティックな構成には驚かされます。と言うのも、ここでは合唱の他に7人の「俳優」が加わって、「セリフ」とか「叫び」とか「笑い」などを提供しているからです。実際には、どこからが合唱でどこからが俳優なのか分からないような、「微少音程でハモるセリフ」などもあって、音楽と演劇が渾然一体となったスメラの世界が果てしなく繰り広げられます。
久しぶりの顔合わせとなるカリユステとこの合唱団、地声からベル・カントまでを縦横に使い分け、この多彩な世界を見事に描ききっています。どんな無茶なことをやらされても、基本の三和音がどんな時にでも美しく響いている幸福感は、無上のものです。
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by jurassic_oyaji | 2005-11-02 22:56 | 合唱 | Comments(0)