おやぢの部屋2
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MOZART/Requiem(Ed. Levin)


C. Brewer(Sop), R. Donose(MS)
J. Tessier(Ten), E. Owens(Bas)
Donald Runnicles/
Atlanta Symphony Orchestra & Chamber Chorus
TELARC/CD-80636



このレーベルでは3枚目となるモーツァルトのレクイエムです。今までのものは、ショウ/アトランタ交響楽団によるバイヤー版と、パールマン/ボストン・バロックによるレヴィン版だったわけですが、今回の新録音はその間を取ってアトランタ交響楽団によるレヴィン版という組み合わせになっています。もちろん、オーケストラは同じですが、指揮者はロバート・ショウからラニクルズに変わっているのは、言うまでもありません。もう一つ、このラニクルズが録音した「カルミナ・ブラーナ」の時には単なる「合唱団」という呼称だったものが、今回は「室内合唱団」という表示になっています。合唱指揮者の名前がノーマン・マッケンジーという同じ人ですから、おそらくこれは同じ団体なのでしょう。人数が少なくなった時にだけ「室内」という呼び方をしているのかもしれません。もっとも、ブックレットのメンバー表を見ると、総勢70人近く、普通の「合唱団」は100人以上だといわんばかりのこの感覚には、ちょっと馴染めません。
かつて、ロバート・ショウとともに大規模な合唱曲の数々の優れた演奏を録音していたこのコンビですが、残念なことにショウ亡き後はそのレベルは大幅に低下してしまったように見えます。繊細さからはほど遠いその大味な肌触りには、失望を禁じ得ません。パートごとの焦点が全く定まっていないために、その集まりである合唱団としても、音としての方向性が全く見いだせなくなっているのです。
オペラハウスでキャリアを築いてきたラニクルズは、オペラ歌手をソリストに揃えて、このレクイエムから殆どオペラに近いドラマを描き出そうとしたに違いありません。「入祭唱」で、ソプラノのブルワーが力強い声で朗々と歌い出した時、その印象は確固たるものになりました。合唱に付けられたちょっと聴き慣れない抑揚も、そんなドラマティックな表現を目指したものなのでしょう。ただ、そんな指揮者の要求に全くついて行けない合唱団の技量だったため、そこで描かれたドラマは全く当初の目論見からは外れたものになってしまったのには、笑うしかありません。「キリエ」の二重フーガでのハチャメチャなメリスマからは、対位法の妙と言うよりは、まるで、お互いの立場を主張して譲ることのない嫁と姑の「言い争い」の姿のようなものが、見事に描き出されていたのですから。この版での目玉である「アーメン・フーガ」では、そこに息子も加わって果てしない修羅場が繰り広げられるといった有り様。「ディエス・イレ」もすごいですよ。合唱とオーケストラは全くかみ合っていないものですから、もはや家の中の争いごとでは済まないような、そう、フランスの暴動のような事態が眼前に広がってきます。
そんな、およそモーツァルトが描いたものとはほど遠い画面が見えてしまったのには、録音の悪さも手伝っていたはずです。実は、最初に聴いたのはいつも使っているシステムではないサブの装置だったのですが、全く明瞭さにかける鈍い音にはがっかりしてしまったものです。本来の装置で聴き直してそれは少しはマシにはなりましたが、弦楽器の潤いのない音などは装置が変わっても改良されることはありませんでした。もちろん、これだけの大人数の合唱を満足に再現できるはずもなく、演奏者の欠点だけを強調したような惨めな音になってしまったのです。これはSACDではありませんが、録音はDSD、最良の方式でも悪い録音はあり得るという、当たり前のことが再確認されてしまいました。
このCDに存在価値を見いだすとすれば、こういう演奏が出てくるほどレヴィン版の存在自体が一般的になってきた、ということなのでしょうか。韓国料理の方は、とっくに一般的になっていますが(それは「ビビンバ」)。
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by jurassic_oyaji | 2005-11-11 20:15 | 合唱 | Comments(1)
Commented by ponty at 2005-12-02 21:29 x
Mozart:Requiem Dm K.626 (Karajan/Wiener Phil/Anna Tomowa-Sintow)
http://music-review.info/article/10033726.html
へのTBありがとうございました。

この作品を始め、ジュースマイヤー版を中心に聴いています。いろいろ問題点も指摘されているようですが、再評価の声も高いとか。この記事をきっかけに実際に他のものも聴き比べてみようかと思います。大変参考になりました。また拝見させていただきます。