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OHM+/The Early Gurus of Electronic Music





Various Artists
ELLIPSIS ARTS/CD3690



「電子音楽の初期のグルたち」という美味しそうな(それは「グルメ」)タイトルを持つ、CD3枚、DVD1枚からなる膨大な音源と映像を集めたセットです。サブタイトルは「1948-1980」、1948年のピエール・シェッフェルから、1980年のブライアン・イーノまでの作品を、時系列を追って紹介するという体裁を取っています。
その前に、1948年以前に発明されていた電子楽器、「テルミン(1920)」と「オンド・マルトノ(1928)」を取り上げるのは、このセットの趣旨を理解すれば当然のことでしょう。なによりも、このジャケットのデザインを見てください。ディスク類とブックレットを収めた透明の箱の表面に印刷されているのは、そのテルミンの回路図なのですから。史上初の「テルミニスト」クララ・ロックモアの演奏する「感傷的なワルツ」(ソースとなったDELOSには正確な録音年代が記載されていませんでしたが、このブックレットのロバート・モーグのコメントで、「1976年頃」というのが初めて分かります)ほど、このアンソロジーを始めるのにふさわしいものもありません。
メシアンのオンド・マルトノ・アンサンブルのための「祈祷」に続いて、「ミュージック・コンクレート」の創始者であるシェッフェルの作品が収められているのも、制作者の意図の明確な反映でしょう。そう、彼の、「録音された生音を加工する」というサンプリングの方法論も、ここではしっかり「電子音楽」の範疇として捉えられているのです。全てのセットを聴いてみると、純粋な「電子音」だけで作られたものよりは、サンプリングによって生音を取り込んだものの方が多くなっているのも、このようなコンセプトのあらわれなのでしょう。
この膨大な作品群を聴き通して、さまざまなこと、今まで知らなかったような新しい事実を多く知ることが出来ました。電子音でバロックを演奏したのは、決してワルター・カーロスが最初ではなかったこと。サンプリング音を含め、多くの音を重ねて「音の雲」を作り出したのは、決して富田勲が草分けではなかったこと、そして、もっとも大きな収穫は、「電子音楽」というものも他の楽器による音楽と全く同様に、作り手の個性がそのまま作品に反映されるものだ、という、ある意味当たり前なことです。聴く前には、正直、同じようなテイストの羅列はちょっと辛いな、と思っていたのですが、どうしてどうして、そこには好奇心を刺激されて止まない魅力的な音楽の沃野が広がっていたのです。
そんな中で、ひときわ惹き付けられたのは、なんといってもシュトックハウゼンでしょう。几帳面な音の構成の中には、なぜ電子音を使わなければならなかったかという必然性が、はっきり現れています。日本人としてただ1人エントリーされている湯浅譲二も見逃せません。虫の音のような音源の選択は、「右脳」感覚の反映でしょうか。名前だけは聞いたことのあるホルガー・チューカイの、巧みなサンプリングによるエンタテインメントも楽しめます。衝撃的だったのは、ラ・モンテ・ヤングの2種類の周波数を持つ正弦波だけで作られた曲。常に同じ音が継続されて流れているだけなのですが、スピーカーの前で耳の位置を変えると、音の成分が微妙に異なって聞こえてくるのです。そして、最後にブライアン・イーノの、「ヒーリング」そのものといった音楽を体験する頃には、この1980年を境にして「電子音楽」自体にドラスティックな変貌があったことが理解されることでしょう。このアンソロジーが、なぜこの年のもので終わっているのか、その理由は明白です。
DVDの方は、インタビューあり、アニメーションありの2時間15分、これも、クララ・ロックモアで始まり、ロバート・モーグで終わるという構成には、深い意味が込められていると思わないわけにはいきません。
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by jurassic_oyaji | 2005-11-16 20:59 | 現代音楽 | Comments(0)