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Sacred Choral Music




Peter Dijkstra/
Chor des Bayerischen Rundfunks
OEHMS/OC 540



バイエルン放送合唱団という、長い伝統を誇る合唱団(なんでも、バイエルン放送局所属の音楽団体としては、最初に出来たものだとか)は、バイエルン放送交響楽団と共演した数々のレパートリーで、広く知られています。合唱を伴う古典的な名曲のみならず、「放送合唱団」ということもあって、その時代に出来たばかりのいわゆる「現代音楽」も数多く演奏、録音しているのは、よく知られています。例えば、1968年に録音されたリゲティの「レクイエム」の放送音源は、あの「2001年宇宙の旅」という有名な映画のサウンドトラックとして使用され、その「歌声」はクラシックとは縁のない多くの聴衆の耳にまで届いていたのです。もちろん、あの「モノリスのテーマ」をきちんと「音楽」として捉えられた人は、それほど多くはなかったはずですが。
この由緒ある合唱団の音楽監督に最近就任したのが、ペーター・ダイクストラです。この名前、どこかで聞いたことがあると思った方は、なかなかの合唱通、そう、ここでも以前ご紹介した「ジェンツ」という団体の指揮者として、私の記憶にもありました。1978年生まれといいますから、まだ20代後半、しかし、幼少の頃からボーイソプラノとしてのキャリアを誇り、12歳の時にはすでに指揮の経験もあったというダイクストラ君は、多くの指導者によってその才能を磨かれ、若くして一人前の合唱指揮者としての地位を築いてしまったのです。
オランダで生まれ、オランダで教育を受けた彼ですから、音楽的にはフランス的な要素を多く身につけてきたことでしょう。「ジェンツ」のアルバムでは、デュリュフレ、プーランク、メシアンなどを、実に爽やかに演奏していたのが印象的でした。そのような資質の彼が、この南ドイツの合唱団を任されて行ったのは、この合唱団が誇る豊かな伝統に、新しい要素を付け加える、ということでした。このアルバムで彼が選んだ曲目は、先ほどの3人のフランス人のものと、オランダのトン・デ・レーウの作品だったのです。
最初にプーランクの「サルヴェ・レジーナ」が聞こえてきた時には、その洗練されたソノリテに、ちょっとびっくりしてしまいました。確かに、そこには「ドイツ」といって連想されるような鈍重さは殆ど見られなかったのですから。事実、この合唱団のメンバーを見てみると、「ゴーダ・マサコ」さんとか「スズキ・アツコ」さん(どこかで聞いた名前?)といった日本人と思われるものも見かけられますから、体質的にはもはやそれほど「ドイツ」ではなくなっているのかもしれませんね。
しかし、聴き続けていくうちに、音色的には軽やかではあっても、音楽の作り方には依然として「鈍重さ」が残っていることが、じわじわと感じられるようになってきます。それは、指揮者がどうのこうのと言う以前の、例えばメンバー1人1人のハーモニーの感じ方のようなものなのですが、具体的には和音が変わる時のフットワークが、非常に重たく聞こえてしまうのです。フランス人であれば何もためらわないでスパッと切り替えられることが、彼らには非常に難しいことのように思えてしまうのですね。これが「伝統の重さ」というものなのでしょう。ドイツの、ある意味論理的な和音進行を表現することを至上のものとしてきた合唱団にとって、フランスの、彼らにしてみればノーテンキに違いないハーモニーを演奏することがこんなに難しかったのか、という、逆の意味でのカルチャー・ショックに近いものを味わった思いです。
同じ指揮者によって歌われているメシアンの「おお聖餐よ」を、「ジェンツ」のものと「バイエルン」のもので比べてみる時、その間には見事なまでの文化の「壁」が横たわっているのが分かるはずです。フランス語のテキストが用いられているデ・レーウの「祈り」という曲も、そのディクションはおよそフランス語とはほど遠いもの。ダイクストラ君の前途は、決して楽観できるものではありません。年末も近いことですし、早めに風邪薬を飲んで、合唱に備えておきましょう(「第9」ストナ)。
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by jurassic_oyaji | 2005-11-17 20:24 | 合唱 | Comments(0)