おやぢの部屋2
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FAURÉ/Requiem


Sylvie Wermeille(Sop)
Marcos Fink(Bar)
Michel Corboz/
Ensemble Vocal et Instrumental de Lausanne
AVEX/AVCL-25046(hybrid SACD)



先日、「CDの価値は収録時間の長さでは決まらない」と書いたばかりですが、やはり程度問題というのはあるものです。今回はSACDということもあるのでしょうが、37分しか入っていなくて3000円、微妙ですね。
コルボにとって、おそらく3度目になるこの曲の録音、1972年(ERATO)と1992年(ARIA)の時には普通の「第3稿」が用いられいましたが、ここではなんと「ネクトゥー・ドラージュ版」という、「第2稿」にあたる版で演奏されています。長年この曲を演奏し続けてきた彼が晩年に到達したのがこの版だったというのは、感慨深いものがあります。なんでも、最近山形県のさるアマチュア合唱団が、この「ネクトゥー・ドラージュ版」でコンサートを開いたとか、合唱の現場では確実にその知名度は広がってきています。木管楽器もトゥッティのヴァイオリンもないという極めてユニークな編成によって味わう独特のフォーレ・サウンドが、どんな演奏会でも聴ける日が来るのもそう遠いことではないはずです。ただ、同じ「第2稿」と言っても、ジョン・ラッターが編曲したいわゆる「ラッター版」は、私はある種妥協の産物ではないかと思っているのですが。
この録音は、今年の2月に日本で行われたコンサートのライブ録音です。東京オペラシティのコンサートホールという、合唱などは非常に美しく響くホールなのですが、この録音は必ずしもその合唱がバランスよく収録されたものではありませんでした。どちらかというと、オーケストラの方に重点を置いたような不思議なバランス、ヴィオラの深い響きが織りなす渋いオーケストレーションは存分に堪能できるのですが、肝心のコーラスがそのオーケストラに埋もれてしまって、あまり聞こえてこないのです。最近、マルチチャンネルのハイブリッド盤で、CDレイヤーを聴いた時によく感じられるこのアンバランス感、もしかしたら、エンジニアの耳がサラウンドに偏ってしまって、もはや2チャンネルには対応できなくなってしまっているせいなのでしょうか。
コルボという人に関しては、私は決して熱心なリスナーではありません。マンガは好きですが(それは「コルボ13」)。というのも、例えばERATOから出ていた一連のモンテヴェルディの作品などでは、そのあまりに主観の勝った表現に辟易した記憶があるからです。「精神性」や「神への信仰」を語る前に、もっとやるべきことがあるのではないか、という思いが、どうしても彼の演奏にはついて回ったものでした。しかし、彼の場合、ライブでの聴衆を巻き込んだ燃焼力には、何かとてつもない魅力があるのかもしれません。別の曲でのライブ盤を聴いたことがありますが、殆ど崩壊寸前のその混沌の中からは、確かに彼にしかなし得ない「何か」が聞こえて来たような気がしたものです。
今回の東京でのライブ、その「燃焼力」は「Libera me」で確かなものとなって現れていたことを、このCDによって知ることが出来ます。通常の演奏、そして、彼自身の演奏と比較してもおそらく倍近くの演奏時間ではないかと思われるほどのとてつもなく遅いテンポからは、かつてこの曲からは聴いたことのなかったおどろおどろしい情感が伝わってきたのです。まるで今にも倒れそうなほどの頼りない足取りが聞こえてくるような低弦のピチカートに乗って歌われるバリトン・ソロは、何か大きな不安を内に秘めているかのように、聴衆の耳には届いたことでしょう。このテンポが本番だけのものだったのは、そのバリトン、フィンクが、思ったように息が持たなくて、プロにはあるまじき場所でブレスを余儀なくされたことでも分かります。
Pie Jesu」でのソロは、コーラスのメンバーでもあるヴェルメイユ。その不安定な音程と、苦しげなビブラートは、いかに無垢な声であってもカバーすることは出来ません。したがって、合唱のレベルも、極上とは言い難い歯がゆさを伴うものでした。
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by jurassic_oyaji | 2005-11-23 19:55 | 合唱 | Comments(2)
Commented by mottenin at 2005-11-23 21:11
レクィエムだけで3,000円というのは高いですよね。今日店頭で手に取りましたが、結局買いませんでした。でも買わなかった理由は価格だけではありません。
ヴァイオリン・ソロがきちんとした意義をもっているように思えるネクトゥー・ドラージュ版はとても魅力的なのですが、数年前のコンサート(於宮城県民会館。モーツァルトとフォーレのレクィエムというプログラムでした。)でのあまりに粗雑な演奏に深い憤りを抱いて以来、よほどのことがない限り彼の録音を敬遠することにしているのです。
今回も、よほどのことには当たらないようですね。
Commented by jurassic_oyaji at 2005-11-23 22:06
Motteninさま
コメントありがとうございました。
そのコンサート、直前まで迷ったのですが、結局行きませんでした。
このCDも、この版だから買ったまでで、演奏は全く期待していませんでした。期待通り、というのも変ですが、この指揮者は完全に終わっているという印象しかありません。