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BARTOK/Music for Strings, Percussion and Celesta
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Christian Ostertag(Vn)
Michael Gielen/
SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
HÄNSSLER/CD 93.127



「バーデン・バーデン&フライブルクSWR交響楽団」というよりは、未だに「南西ドイツ放送交響楽団」という言い方の方がぴんと来る、このオーケストラは、もちろん、南西ドイツ放送付属の3つのオーケストラのうちの一つです。ハンス・ロスバウト、エルネスト・ブールといった、「現代音楽」ファンにはお馴染みの指揮者が首席指揮者を務め、「ドナウエッシンゲン音楽祭」という、まさに現代音楽のメッカで華々しい活躍をしてきたこのオーケストラには、何と言っても現代音楽で培ってきた精緻な演奏が期待されています。かつての首席指揮者、現在でも常任客演指揮者として密接な関係にあるミヒャエル・ギーレンは、そんなオーケストラの力をここで存分に発揮してくれました。
ギーレンとこのオーケストラとの演奏で忘れられないのは、ブルックナーの交響曲第4番の第1稿の録音(INTERCORD/1994年)です。現在では殆ど演奏されることのない、この若書きの、言ってみれば「怖いもの知らず」といった趣さえ漂う版は、オーケストラにとっては、とてつもない難所がいくつもあって実際に演奏しようとすると多くの困難が伴うものです。特に、最終楽章の最後の部分などは4拍子と5拍子が入り乱れての「ポリリズム」の饗宴、とても楽譜通りに演奏することなど不可能に思えるほどのものです。実際、数種類出ているこの版の録音で、ここをきちんと演奏しているものは殆どありません。その中にあって、このギーレンたちは、信じがたいほどのリズム感とアンサンブル能力でもって、この部分から、正確に演奏した時にのみ味わえる「モアレ効果」を出現させてくれたのです。焼そばの中には出現して欲しくありませんが(それは「モヤシ」)。そう、ギーレンの演奏が私達をとらえる最大の要因は、まさにその完璧なリズム感なのです。
このアルバムでギーレンが取り上げたのはバルトーク、リズムが大きな要素となっている彼の作品では、そのギーレンの特質は間違いなく大きな魅力となってきます。それが最大限に発揮されているのが「弦チェレ」の、特にリズミカルな2、4楽章ではないでしょうか。2楽章は、意表を衝いてかなりあっさりしたテンポで淡々と始まります。過剰なアクセントや極端な切迫感などはその中には全くないにもかかわらず、深いところから確かに迫ってくるグルーヴ、これは、まさにきちんとしたリズムが背景にあるからこそできる芸当に他なりません。楽譜に忠実に演奏しているだけなのに、そこからはさまざまな衝撃が実体のある訴えかけとなって伝わって来るという、ある意味「おしゃれ」な演奏、こんな素敵なものは、力ずくで無意味なアクセントをでっち上げている○ーノンクールあたりでは味わえるわけがありません。
4楽章も、最初の部分がシンコペーションの効いた軽やかなダンスがずっと続いていることなど、この演奏を聴くまで感じたことはありません。今まで、情緒的な側面に気を取られて、いかに基本的なリズムをおろそかにしていた演奏が多かったかということが、図らずも露呈されてしまったわけです。ギーレンのすごいところは、そのようなある意味冷徹な処理を取っているにもかかわらず、歌うべきところではしっかり歌っているということです。この4楽章でも、その対比がどれだけ音楽を深みのあるものにしていることか。
「ヴァイオリン協奏曲第1番」では、うってかわって叙情的な面が強調されています。これも、作曲家のメッセージを真摯に受け取った結果でしょう。そして、まるで同じ作曲家のオペラ「青髭公の城」のようなテイスト満載の「管弦楽のための4つの小品」で見られる、ナイフのように鋭い表現こそは、まさにギーレンの真骨頂と言えるのではないでしょうか。「プレリュード」の冒頭で聞こえてくるフルートソロのひんやりするほどの不気味さはどうでしょう。
by jurassic_oyaji | 2005-12-05 20:13 | オーケストラ | Comments(0)