おやぢの部屋2
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MOZART/Mass in C Minor(ver. Levin)

Damrau(Sop), Banse(Sop)
Odinius(Ten), Marquardt(Bas)
Helmuth Rilling/
Gächinger Kantorei Stuttgart
Bach-Collegium Stuttgart
HÄNSSLER/CD 98.227



モーツァルトの「ハ短調大ミサ」はついこの間取り上げたばかり、その際にこの曲が未完であることにも言及していましたね。「クレド」が最初の2曲しかなく(それも、オーケストレーションは未完、ちゃんと作っておいてくれど)、「アニュス・デイ」は全く作られていないというのが、この曲のありのままの姿なのです。かつては作曲されていない部分を補填して演奏する(「シュミット版」がこの形)という事が広く行われていたようですが、最近では作曲者が作ったものだけを演奏するという道が、主流になっています。「ランドン版」や、新全集である「エーダー版」が、その道を先導したものでした。
しかし、あと数週間後に迫った2006年に「モーツァルト・イヤー」を迎えることになれば、やはりこの曲を、ミサ曲が本来あるべき姿で演奏されるようにしてあげたい、という動きも盛り上がってこようというものです。その中心となったのが、宗教曲業界の重鎮ヘルムート・リリンク、彼は同じ志を持つ「シュトゥットガルト・バッハ・アカデミー」と「カーネギー基金」の協力の下、このような「修復」には定評のあるロバート・レヴィンにその仕事を依頼したのでした。ご存じの通り、レヴィンは同じ作曲家の「レクイエム」の再構築にあたっても、リリンクとの共同作業で素晴らしい仕事を残していますね。
レヴィンによって出来上がったフルスペックのミサ曲、「クレド」の残りの部分は、この曲が作られた当時の現存する多くのスケッチから修復されました。そして、「アニュス・デイ」には、このミサ曲が作られた2年後に、この曲の「キリエ」と「グローリア」をそのまま使い回しした「悔悟するダヴィデ」という作品の中で、新たに作られたアリアを逆に使いまわすという、なかなか粋なことを行いました。この、本来はソプラノソロのためのアリア、短調で始まったものが後半長調に変わるのですが、そこから「ドナ・ノービス・パーチェム」のテキストが合唱で歌われるようになっています。その結果、このミサ曲は演奏時間7633秒と、まさに「大ミサ」と呼ぶに相応しい堂々たるものに仕上がりました。
この「レヴィン版」、初演は2005年の1月にニューヨークのカーネギー・ホールで行われ、3月にシュトゥットガルトで行われた再演の模様が、ライブ録音されたものが、このCDという事になります。
その「再構築」の成果ですが、「クレド」の後半は、やはり馴染みがないせいか、ある種の違和感が伴うのは致し方のないことでしょう。この版が根付くかどうかというのは、ひとえに演奏される頻度、いわば「ヘビーローテーション」の有無にかかっているのではないでしょうか。ただ、テノールのソロによって歌われる「Et in Spiritum Sanctum」という装飾的なアリアは、オディニウスのあまりにも稚拙な演奏で曲自体の評価が下がってしまうのが懸念されてしまいます。
しかし、バンゼによって歌われる「アニュス・デイ」には、この大きなミサ曲の中での一つのハイライトと位置づけられるだけの確かな存在感を誰しも認めることが出来るはずです。このナンバーがあることによって、「レヴィン版」は将来もその存在価値をアピールできるだけのものを持ち得たのではないでしょうか。
ライブという事もあって、演奏面では不満足な点も多くなっています。しかし、一つの記念碑的な演奏として、持っているのも悪くはないかな、とは思えるものです。
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by jurassic_oyaji | 2005-12-08 19:24 | 合唱 | Comments(0)