おやぢの部屋2
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One star, at last




Stephen Cleobury/
BBC Singers
SIGNUM/SIGCD067



今宵はクリスマス・イブ、あなたの一番大切な人と、床暖房のきいた暖かい部屋で、肩を寄せ合いながら聴くには絶好のアイテムが届きました。あいにくSACDではありませんから、包み込むようなサラウンドは味わえませんが、今夜のメニューはカレ手作りの皿うどん、愛し合う2人にはなんの差し障りもないはずです。
副題が「A selection of carols of our time」、最近作られたキャロルだけを集めたアルバムであることが謳われています。元々は2000年にBBCがラジオ用に制作したものなのですが、それをこのレーベルがCDにしてリリースするという、まるでライブの放送音源のようなパターンですね。もちろん、この録音はきちんと教会でセッションを行ったものです。
看板の通り、全20曲のうち12曲が初録音、さらにその中の6曲はBBCが委嘱した作品ということで、いってみれば完璧に「有名でない」キャロルが集まったもの、かなりマニアックなアイテムではあります。しかし、ものは「キャロル」ですから、何も知らずに聴いても「クリスマス!」という感じを与えられる曲が大半であることは、仲の良いお二人には喜ばれることでしょう。最初のボー・ホルテンというオランダの作曲家による「Nowell Sing We Now」という新作が、まさにそんな趣をたたえたものです。ソプラノ・ソロがまるで少年のような無垢な声で歌われていて、流れるようなその曲に自然に入っていける心地よさを誘います。なぜか本体の合唱がちょっと重苦しいな、という印象も、それほど気にはなりません。
中には、殆ど「ポップス」と言っても構わないほどキャッチーな魅力を振りまいているものもあります。スイスの作曲家カール・リュッティの「I Wonder as I Wonder」など、シングル・ヒットしてもおかしくないような素敵な曲です(J・J・ナイルズのフォークソングに、同じタイトルの似たような曲がありましたね)。美人作曲家ロクサンナ・パヌフニクが編曲したポーランドの古いキャロル「Sleep,little Jesus,sleep」も、ソプラノ・ソロが、先ほどの人とはうってかわった毒々しさで迫りますが、曲の美しさを損なうほどのものではありません。ハワード・グッドールの「Romance of the Angels」は、歌詞はルネッサンス期のスペインのものだそうですが、それをなんと「ルンバ」に仕立て上げたというユニークさが光ります。パイプオルガンと混声合唱が教会の中でラテンの明るいリズムに乗って演奏する、こんなキャロルを作らせてしまうBBCも、なかなか太っ腹なところがあるのだな、と感心させられてしまいます。
そう、最初のうちは甘いムードに浸っていたお二人も、このBBCが仕掛けたとてつもないキャロル・プロジェクトには、そろそろ度肝を抜かれはじめている頃ではないでしょうか。ジェイムズ・マクミランの「Seinte Mari Moder Mode」あたりは、殆ど怒鳴り声に近い張った声から、まるでささやくような声まで瞬時に使い分けて、ちょっと民族的なコブシを聴かせるなどという、まさに作曲家の「自己表現」の世界、完璧に「キャロル」の範疇を超えている、と思わせられるものです。ポーランドの作曲家ジェルジ・コルノヴィツの「Waiting」も、サンプリングした声(母親と娘?)を挿入するなど、紛れもなく「表現」が勝った作品、のんびり聴き流すのではなく、真摯に曲に向かい合うだけの覚悟が必要になってきます。
そんな七面倒くさいことを言っていても、最後にジョン・ハールの「Mrs Beeton's Christmas Plum Pudding(average cost:3 shillings and 6d)」という長ったらしいタイトルの曲が流れてくれば、またもとの幸せな雰囲気が戻ってくるはず。いきなりSPレコードのスクラッチノイズの中から聞こえてくる貧弱な音(もちろん、そのように作り込んであるものです)は、紛れもないいにしえのバーバーショップ・スタイルのコーラスのコピー、こんなお遊びまでしっかり「委嘱」してしまう、またしてもBBCの懐の深さには、感服です。
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by jurassic_oyaji | 2005-12-24 20:07 | 合唱 | Comments(0)