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Mozart Meets Cuba





Klazz Brothers & Cuba Percussion
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以前もご紹介した、ドイツのジャズ・トリオ、クラズ・ブラザーズ(「Klazz」というのは、KlassikJazzをつなげた言葉だとか)と、キューバの2人のパーカッション奏者のユニットによる、ラテン・ジャズによるクラシックの名曲の「再構築」である「Meets Cuba」シリーズ、今回は大方の予想通りモーツァルトがネタになっています。しっかりとクラシックの基礎を持つキリアン(ベース)とトビアス(ピアノ)のフォルスター兄弟に、ドラムスのティム・ハーンが加わったかなり知的なトリオ、そこにアレクシス・ヘレラ・エステヴェスと、エリオ・ロドリゲス・ルイスという、生粋のキューバン・パーカッションが加わって生み出されるラテンのグルーヴ、そこには、確かなボーダーレスの世界が広がっていました。あ、同じ海の生き物でも、こちらには吸盤はありません(それは「クラゲ」)。
こういう企画で曲を作る場合、いかによく知られたメロディーを用いるか、というのが一つのポイントになってきます。誰でも知っている有名なものが素材になっているからこそ、それをいかに料理したか、というおもしろみが味わえるのですからね。このアルバムでも、そのあたりは抜かりがないように見えます。本当に誰でも知っている「トルコ行進曲」を、ちょっと「外した」リズムで処理したり、「ド~ミソ、シ~ドレド」という有名なハ長調のピアノソナタを、一瞬元ネタが分からなくなるほど大胆にデフォルメしたりと、まずは予想通りの展開です。
しかし、さすがドイツ人、と思わせられるのが、確かに有名ではあっても日本人の中では必ずしも「誰でも知っている」というわけにはいかないオペラからの引用です。ファンキー・シャッフルに乗った「ザルツブルク・シャッフル」というのは、「魔笛」のポプリ、パパゲーノの2つのアリア、パパゲーノとパミーナのデュエット、タミーノのアリア、夜の女王のアリアなどが延々と続くのを楽しめるのは、もしかしたらかなりの「通」だけなのかもしれません。
「魔笛」ネタはもう一つあって、ここでは「愛の喜びは露と消え」という第2幕で歌われるパミーナの悲痛なアリアが使われています。そこになんと「ベサメ・ムーチョ」を同時に演奏する、というのがミソ、こんな全く別の世界の曲同士が、同じコード進行だと言うだけで結びついてしまうのは、殆ど奇跡です。ただ、「いっぱいキスして」というかなり情熱的なタイトルのこのラテンの名曲も、その歌詞は死の床にある夫からの、妻に対する永遠の別離を歌ったものであると聞けば、恋人が心変わりをしたと思いこみ、死を決意するというパミーナのアリアとの接点も見いだせようと言うものです。そこまで考えていたのであれば、ちょっと怖くなってしまいますが。
しかし、「死」をテーマにしたものがもう一つあるとなると、それも現実味を帯びてきます。それは、「ドン・ジョヴァンニ」の序曲の序奏の部分だけをボレロに仕立てたナンバーです。暗く重苦しいテーマが続く中に、一瞬明るいメロディーが現れますが、それはショパンの「葬送行進曲」の中間部のテーマなのです。ここまで作り込んであれば、このアルバムがただのノーテンキな「ポップ・クラシック」とは一線を画していることが、自ずと分かってくるはずです。
彼らのシニカルな視点は、その「ドン・ジョヴァンニ」の「手を取り合って」という、主人公が村娘をナンパする時のデュエットが、けだるいバラードで、まるで罪深い不倫のように描かれていることからも、確認できることでしょう。同じオペラの「乾杯の歌」が、いとも軽快なモザンビークに変貌しているからこそ、その対比は際立ちます。
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by jurassic_oyaji | 2005-12-26 20:10 | ポップス | Comments(0)