おやぢの部屋2
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BEETHOVEN/Symphony 9


Stanislaw Skrowaczewski/
Chor des Bayerischen Rundfunks
Saarbrüken Radio Symphony Orchestra
OEHMS/OC 525
(輸入盤)
BMGジャパン/BVCO-37424
(国内盤)


現役最高齢を誇っていた指揮者のジャン・フルネが引退してしまったということで、今年の8月に83歳を迎えるヴォルフガング・サヴァリッシュがめでたくこの栄誉を担うことになりました。そして、そのほんの一月あとの2番手に付けているのが、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキということになります。最近、やっとの思いでN響との共演を果たしたサヴァリッシュにはいかにも衰えてしまった印象を与えられたものですが、スクロヴァチェフスキの場合、この最新アルバムを聴く限り、彼の中にはそんな年齢など感じさせない青年のような若々しさが、いまだに宿っていることに気づかずにはいられません。
早い話が、楽譜の選択です。スクロヴァチェフスキがここで使っているのは、あのベーレンライター版、この年齢になってしまえば、普通は守りに入ってしまい、早々新しい楽譜など使いたがらないものですが、彼の場合は違います。しかも、よくある折衷的な使い方ではなく、デル・マーの校訂に忠実に従って、ちょっと不自然なところもしっかり楽譜通りに演奏しているという徹底ぶり、これは、この指揮者が今までの長いキャリアの中で別の楽譜を使って演奏してきたことを思えば、素晴らしいことです。
ちなみに、この版についてはジャケットでもライナーでも何も触れられてはいません。ジンマンあたりから始まった、まるで一つのブランドのようにこれ見よがしに表記されていたという「ブーム」も、出版されて10年も経てば収まってしまったということなのでしょうか。特にコメントがなくても、この楽譜を使うことがごく普通のことになったということなのであれば、それはそれで歓迎できる状況です。ただ、実は、この楽譜の敵役として「いけない楽譜」とされてきたブライトコプフ版にしても、最近、ペータース版で名をあげたペーター・ハウシルトなどの手によって新版が完成しており、それを用いた録音も、そろそろ出てくることでしょう。そうなった時に、きちんと差別化を図る意味でも、版についてははんきり表示しておいて欲しいものです。
スクロヴァチェフスキの演奏、最初から最後まで、まるで鋼のような強い意志で支配されているそのドライヴ感には、圧倒されるものがあります。特に、第2楽章のアップテンポで押しまくる迫力には小気味よささえ感じることが出来ます。ただ、第3楽章では、それが逆に流れを損なう無骨な力となってしまい、この楽章の持つ柔らかい感じが失われてしまっているのが、ちょっと残念です。後半の、木管楽器がテーマを演奏して、その間に弦楽器の装飾的なフレーズが流れていくという場面でも、そのゴツゴツした弦楽器だけが目立ってしまって、木管の流れるようなテーマを消してしまっているように見受けられました。
声楽が入ってくるフィナーレでは、合唱の素晴らしさが光ります。最初のうちはそれほどの魅力は感じられないのですが、テノール・ソロで始まるマーチが終わり、長いオーケストラの間奏が、例の不思議なシンコペーションのホルン(これが、ベーレンライター版の特徴)で終わったあとに出てくる「Freude schöner~」の迫力には、度肝を抜かれてしまいます。その前の流れから、指揮者に煽られてしゃかりきになって演奏しているオーケストラの上を軽く飛び越えて、おそろしく存在感のある合唱がそこにはありました。時として、ベートーヴェンはなぜここに声楽を持ってきたのか分からなくなるようなただの「叫び」でしかないようなものが多い中、この合唱は、確かにここに存在する意味を主張していたのです。
その点、ソリストたちは相変わらずの苦労ばかり多くて訴えるものの少ないスコアに、辟易しているように見えます。アンネッテ・ダッシュのような人が、こういうことをやっていてはいけません。
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by jurassic_oyaji | 2006-02-22 22:00 | オーケストラ | Comments(0)