おやぢの部屋2
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WHITACRE/Cloudburst and other choral works




Stephen Layton/
Polyphony
HYPERION/CDA67543



エリック・ウィテカーというアメリカの作曲家の合唱曲を集めたアルバムです。「ウィテカー」という珍しい名前、ついフォレスト・ウィテカー(↓)という映画俳優を連想してしまいます(綴りが微妙に違います)が、こちらのウィテカーは、あのようなずんぐりむっくりなみてくれではなく、いかにも精悍なイケメン、しかも、1970年の1月2日生まれといいますから、現在36歳、まだまだ若手です。

 Forest Whitaker
ネバダ州のリノに生まれたウィテカーは、ロックスターを夢見る少年でした。しかし、ラスベガスのネバダ大学に音楽教育専攻として入学し、合唱のクラスでモーツァルトのレクイエムを歌った瞬間に、すっかり合唱の魅力に取り憑かれてしまったと言いますから、人間の運命などというものは分かりません。テクノバンドでシンセを弾いていた若者が、今や、超売れっ子の合唱作曲家として、世界中から注目を集めてしまっているのですから。ちなみに、彼は吹奏楽の分野でもよく知られているそうです。代表作が「ラスベガスを食い尽くすゴジラ」というのですから、笑えますね。
このアルバムには、1991年、21歳の時に作った初めての合唱曲から、2004年の最新作までが収録されています。大半がホモフォニックなア・カペラ、その中に一貫して流れているのは、彼独特のハーモニー感です。ドビュッシーからメシアンに至るフランス風のテンション・コードとは微妙に異なる、「クラスター」を経験した後でなければ生み出せないような不思議な危なさを持つこのハーモニーは、もしかしたら「英語」というテキストの持つ語感と密接に結びついているのかも知れません。「hope, faith, life, love」という曲が、そんな「言葉」と「ハーモニー」が見事に融合された素晴らしい作品です。レイトン指揮のポリフォニーが、いつもながらのタイトな音色で、このハーモニーの妙を存分に聴かせてくれています。
その様な、ある意味穏やかな作風、例えばアルヴォ・ペルトあたりの影響がもろに出ているものになっているのも当然の帰結でしょう。アルバム中最長、13分という演奏時間の「When David heard」という曲が、それを端的に物語っています。「My son」という言葉を繰り返して作り上げられるクライマックスは、圧倒的な力を持っています。余談ですが、この言葉が「○○さん」と聞こえてきて、何度も自分の名前を呼ばれているような錯覚に陥ったのも、不思議な体験でした。
アルバムタイトルとなっている「Cloudburst」だけには、ピアノや打楽器の伴奏が入ります。とは言っても出だしはア・カペラ、途中で、それこそ「雲が爆発」して雷が鳴り大雨が降り出すという場面で「効果音」のような使われ方をしています。ここでは、合唱団員が足を踏みならして雨音の「効果」を出しています。
With a lily in your hand」というのが、リズミカルなヴァンプに乗って音楽が進むという、この中ではちょっと異質な肌合いを持っています。確かに、流れるようなテイストの多い中で、一つのアクセントにはなっています。
ただ、最新作(これが初録音)の「This Marriage」での、あまりに洗練されすぎたたたずまいには、ちょっと不安を覚えてしまいます。彼の最大の魅力を放棄してしまったかに見える陳腐なハーモニー、これが「守り」や「枯渇」といった言葉と無縁であることを、切に願うところです。もう一つ、クレジットから、このレーベルのフロント・デザインを創設時から担ってきたテリー・シャノンの名前が無くなっているのが、気になります。
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by jurassic_oyaji | 2006-02-27 21:35 | 合唱 | Comments(0)