おやぢの部屋2
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BACHARACH/At This Time
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Burt Bacharach
SONY BMG/82876734112
EU輸入盤)
BMG
ジャパン/BVCM-31186(国内盤)


輸入盤のレーベル、しっかり「SONY BMG」となっていますね。日本にいたのではなかなか分かりづらいのですが、この2つの巨大レコード会社は、今ではすっかり一つの会社としての体裁を整えたという事が、このレーベルからはっきり分かります。今まで「仲の良いお友達」だと思っていた二人が、実はいつの間にか入籍をして夫婦になっていた、というようなものでしょうか。例えば、アンドリュー・デイヴィスのドヴォルザークのコンプリート・コレクションのように、音源はSONYなのですが、標章はレッド・シールというRCAのマークがついているにも拘らず、SONYから発売になって混乱した、というような状況が起こっているのです。ただし、日本ではこの二つの会社の日本法人が融合することはないそうです。これは親会社の関係だそうで、SONYはあくまでも家電会社として独立しているからだそうです。
さて、バッハBachの次はバカラックBacharachという、分かりやすいつながりです。50年代、60年代に数々のヒット曲を産んだ偉大なソングライター、アレンジャーとしてのバート・バカラックは、とっくの昔に「オールディーズ」という範疇に入ってしまっていたという認識でしたから、まさかこんな時に(というのが、アルバムタイトル)ニューアルバムが出るなんて、思っても見ませんでした。
今年78歳を迎えるバカラック、彼の28年ぶりのニューアルバムは、もはや功成り名遂げた者にのみ許されるような、本当に自分の作りたい物を心ゆくまで追求した、素晴らしい仕上がりになりました。バカラックと言えばまずヒットソングの作り手として知られていたものですが、ここでは、その様なヒットを狙う小細工など微塵も感じられない、あくまで良い音楽だけを作ろうとする真摯な姿を見ることが出来ます。住む家など、オンボロでも構いません(それは「バラック」)。
あえて「ヒットソング」を避けたという制作態度は、ヴォーカルの扱いに見て取ることが出来るはずです。殆どのトラックはまるでインストナンバーのように、バカラック自身のピアノやキーボードを中心に進んでいきます。(実際、純粋なインストナンバーも、2曲含まれています。)そこでのメインテーマは、ヴォーカルが受け持つことはまずありません。従って、ここで主にヴォーカルを担当している人達は、アレンジの範囲内での、言い換えれば極めて個性に乏しい歌い方に終始しているように見えます。そして、これは昔からのバカラックの魅力であった、厚ぼったいストリングス。ヴァイオリン19、ヴィオラ8、そしてチェロ4という編成は、殆どクラシックのオーケストラの編成と変わりません。そこから紡ぎ出されるゴージャスなサウンドは、たとえ今はやりのヒップ・ホップからリズム・ループを導入しようが、バカラックの本質には何の影響も与えないほどの存在感を持って迫ってくるのです。
彼のユニークなコード進行は、このようなインストが前面に出てきた作られ方によって、より必然性を感じられるものになりました。これらは一つの「作品」として、ジャンルを超えてその価値を主張できるだけのものに仕上がっているはずです。
とは言っても、やはり「ヒット曲」としての楽しみも欲しいものです。盟友エルヴィス・コステロが参加した「Who Are These People?」などは、変拍子も交えてヴォーカルが前面にフィーチャーされた、そんな願望を満たしてくれる曲なのでしょう。「Where Did It Go?」では、何とバカラック自身のヴォーカルも聴くことが出来ます。全ての歌詞を初めて自ら書いたというバカラック、この「作品」の持つある種の「暗さ」からは、それがヒット狙いではなかったからこそ、確かなメッセージを感じ取ることが出来たのかもしれません。
by jurassic_oyaji | 2006-03-03 19:55 | ポップス | Comments(0)