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XENAKIS/Complete Works for Solo Piano





高橋アキ(Pf)
MODE/MODE 80



「ピアノ曲全集」というこのタイトルは、CD本体に印刷されている言い方、ジャケットの方では単に「Works for Piano」と書かれているだけです。実はこのアルバム、1999年にリリースされたこのレーベルの「クセナキス・エディション」の第4巻だったのですが(確か、現在は第6巻までが出ていたはず)、その直後、2000年に出版されたクセナキスの1950年頃のいわば「習作」を加えて、晴れて「Complete」として2006年にリイシューされたものなのです。確かに、新録音の曲目の表記は追加されていますが、ジャケットも全く同じ、そしてなによりもコンテンツが変わっているのに品番が一緒というのが、理解に苦しむところです。1999年盤を買った人には、無償で交換に応じるというのでしょうか。なんでも今回は新たにハイ・デフィニッションでリマスタリングされているとか、それなりの付加価値を付けたのは分かりますが、品番が同じというのはねえ。
あいにく、と言うか、幸い、というか、前のCDを買ってない私としては、例えば「Herma」での、聴き慣れた高橋悠治とは全く異なるアプローチに、かつてないほどの新鮮な味わいを見出すことになります。いわば、テクニックの極地をかけて、演奏不可能なものに挑んでいるという悲壮感すら漂うほどの悠治に比べて、アキの方はしっかり一つ一つの音をいとおしんでいるかのような演奏。もしかしたら、その中に叙情性さえも感じられるほどの、みずみずしい「Herma」でした。
打楽器を含む小アンサンブルとピアノとの共演という形の「Palimpsest」なども、例えば似たような編成の「Eonta」(「全集」と言いながら、この曲が入っていなかったのはなぜでしょう)あたりに見られたおどろおどろしい情念が見事に払拭された、見晴らしの良いものに聞こえてきたのも、ピアニストの違いが大きく影響していることは間違いないでしょう。このドラムのノリの良さは、ちょっとした聞きものです。
そして、その、今回が世界初録音となった「ピアノのための6つのシャンソン」は、ごく最近までその存在すらも知られていなかった作品です。これは彼がまだ学生として、パリでダリウス・ミヨーやオリヴィエ・メシアンに師事していた時期のもの。私も含めて、彼の作風は1954年のいわばデビュー作「メタスタシス」から一貫して変わらないものだったという認識を持っていた人達にとっては、これを聴くことはまさに衝撃的な体験以外の何者でもありませんでした。ギリシャのフォーク・ミュージックを素材とした、例えばバルトークの多くのチャーミングなピアノ曲に共通するセンスを持つ、言ってみれば「フツーの」曲たち、その、きちんとした和声と終止形を持つ音楽を聴くことによって、複雑な思いを抱いてしまうのは、私だけではないはずです。4曲目の「3人のクレタの修道士」などは、殆どヒーリング・ミュージックと言っても通用しそうな面持ちですからね。たしか、リゲティあたりも、スタート時には同じようなスタイルを持っていたはず、しかし、それから徐々に作風を変えていったリゲティとは異なり、クセナキスの場合、その変化の度合いはあまりにも急激です。わずか4年でここまで変われるなんて。
そんな、クセナキスの全貌を知る上で欠かすことの出来ないこんな珍しい曲の「初録音」だというのに、このリリースの扱いはどう考えても不可解です。
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by jurassic_oyaji | 2006-03-27 20:06 | 現代音楽 | Comments(0)