おやぢの部屋2
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BEETHOVEN/Abertura Coriolano, Sinfonias 1,4




John Neschling/
Orquestra Sinfônica do Estado de São Paulo
BISCOITO CLASSICO/BC 210



長いことCDと付き合ってきましたが、クラシックでブラジル製のCDなんて、初めて見ましたよ。ジャケットはポルトガル語表記、「ベートーヴェン」はもちろん分かるのですが、「Abertura Coriolano」とはいったい何なのでしょう。そもそも、オーケストラの名前からして分かりません。どこかの都市にあるオーケストラのようですが、「サオ・パウロ」なんてところ、ありましたっけ(「棹、入ろ」なんちゃって・・・あぶない、あぶない)?
慌ててブラジルの地図を出してみたら、それは「サン・パウロ」のことでした。そうか、「Ã」の上のヒゲがポイントだったのですね。そう言えば、ブラジルの作曲家ヴィラ・ロボスの作品に、「サン・セバスティアンのミサMissa São Sebastião」というのがありましたね。その「サン」だったのですよ。
その、サン・パウロ交響楽団の演奏で「Abertura Coriolano」が始まった時、それは「コリオラン序曲」であることが分かりました。しかし、その演奏は、そんなベートーヴェンの曲名よりは、ポルトガル語で表記されてあったものの方がはるかにふさわしく思えるほど、「ブラジル風」のものだったのには、驚いてしまいました。なんといっても最初のアコードの決めからして、まるでラテン・オルケスタでもあるかのような明るく軽やかな響きが聞こえてきたのですからね。そのあとに続くちょっと憂いを秘めたテーマ、これは小気味よいリズムの刻みにのって、まるでけだるいボサノヴァのよう。そう、これはまさにブラジル人によるブラジル人のためのベートーヴェンだったのです。この序曲は、そんな彼らのスタンスをたちどころに聴く人に伝える格好の「ツカミ」となっています。ここで彼らのブラジル・ワールドへ引き込まれたが最後、もはやどっぷりサンバの国のベートーヴェンを堪能しなければいけないカラダになってしまいますよ。
交響曲の1番と4番という、ある種軽めの選曲も、そんな彼らのアプローチには相応しいものだったのでしょう。早めのテンポでグイグイ引っ張っていく1番のフィナーレなど、まるでリオのカーニバルのようなにぎやかさが醸し出されています。
4番の場合ですと、随所に現れるシンコペーションに、いかにもラテンの趣が感じられます。それは、ベートーヴェンが緊張感を高めようと用いたシンコペーションとはちょっと肌合いの異なる、もっと「ダンス」の要素が勝ったもの、思わず踊り出したくなるようなそのリズムは、ヨーロッパのオーケストラでは絶対に出せないものに違いありません。第2楽章のようなしっとりしたところでも、合いの手に入る楽器のなんと積極的でリズミカルなことでしょう。ほんと、「チャッチャ、チャッチャ」という刻みがこれほど生命力を持って聞こえてきたことなど、初めての体験です。
このところのベートーヴェン演奏のシーンは、やれオリジナル楽器だ、やれ原典版だ(ブライトコプフ新版というのが、そろそろ出始めていますね)と、より「オーセンティック」な方向を求めることが主流となっています。そこへ現れた、ひたすらマイペースのこのサン・パウロ交響楽団、演奏者一人一人が肩の力を抜いて楽しんでいる顔が目に浮かぶようです。こんな音楽が聴けるのなら、もう少し生きていても良いな、そんな「勇気」すらも与えてくれたCDでした。
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by jurassic_oyaji | 2006-03-29 19:49 | オーケストラ | Comments(2)
Commented by ちぇり at 2006-04-03 23:43 x
 はじめてコメントさせていただきます。いつも楽しく拝見させて戴いております。大変含蓄のある内容にため息が漏れます。ブラジルのオケのベートーヴェンどんな音がするのでしょうか?興味がわきます。
Commented by jurassic_oyaji at 2006-04-04 08:14
ちぇりさま
コメントありがとうございます。
同じ演奏家の「第9」も手元にあります。これもなかなか。こちらもレビューが書けるかもしれません。