おやぢの部屋2
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NANCARROW, LIGETI, DUTILLEUX/String Quartets





Arditti Quartet
WIGMORE HALL/WHLive0003



最近は普通のレコード会社ではなく、演奏家サイドがレーベルを立ち上げてCDをリリースするというようなことが一般に行われるようになってきました。特に、経費のかかるオーケストラの録音はメーカーからは敬遠されてきていますから、ライブ録音を自己レーベルで発売するという道は、彼らの生き残りをかけた選択肢であったのかも知れません。最初はネットなどで細々と開いていた販路も、一般メーカーと同じルートに乗ることが出来るようになれば、例えばロンドン交響楽団の「LSO」レーベルのように、もはや大手を振って業界に君臨できるほどのものに成長することも可能になってくるわけです。
そんな業界に、コンサートホールが作ったレーベルが参入してきました。それはロンドンにある「ウィグモア・ホール」という、座席数が550という小さなホール。ここでは、年間400以上のコンサートが開催されている(ということは、年間休みなく、しかも、その内の40日は1日2回のコンサートという、ものすごい「充足率」ですね)上に、かなりのものがBBCを通じてネット配信されていると言いますから、それこそ音源には事欠きません。リートや室内楽のリサイタルを中心に、すでに8アイテムほどがリリースされています。
その中で目に付いたのが、アーディッティ弦楽四重奏団が演奏したナンカーロー、リゲティ、デュティーユという現代の作品を集めた2005年4月のリサイタルの録音です。現代の音楽を専門に演奏するために1974年に結成されたアーディッティ弦楽四重奏団は、何度かのメンバーチェンジを繰り返しながら(オリジナルメンバーは、リーダーである第1ヴァイオリンのアーヴィン・アーディッティと、チェロのロアン・デ・サラム2人だけになってしまいました)一貫して「現代音楽」のスペシャリストであり続けています。
従って、ここで演奏しているリゲティの弦楽四重奏曲第2番も、私の知る限り1978年(WERGO)と1994年(SONY)にそれぞれ別のメンバーで録音を行っていました。その15年前に作られたのどかさえ漂う「第1番」とは全く異なるテイストを持つに至った、まさにリゲティ独自の語法に満ちた刺激的な曲、それを、この3通りもの演奏で比較できる機会が出来たなんて、この上ない幸せです。今回のものは、ホールの豊かなアコースティックのせいもあるのでしょうが、以前のものにはなかった「しなやかさ」のようなものが感じられます。まさに、一つの作品が時間とともに成長する過程をまざまざと見せつけられる思いです。
ピアノロール(昔、そんな自動演奏用のピアノがあったのですよ)のための曲などという、とても人間技では演奏がかなわない曲で知られているコンロン・ナンカーローという、中華料理のような名前(それは「ホイコーロー」)の作曲家の弦楽四重奏曲第3番は、作曲の段階からアーディッティたちとディスカッションを行って出来上がった曲です。全てがカノンで作られている曲なのですが、そのテーマが低音楽器から高音楽器へ移るごとに、その早さを3:4:5:6という割合で早めていく、という、やはり人間技とは思えないような構造を持っています。一見ただの音の遊びのようにも感じられなくもありませんが、「セリー・アンテグラル」のような、人間の知覚を無視したものよりははるかに分かりやすい、そして楽しめる曲です。
Ainsi la nuit(夜はこんな風に)」というタイトルを持つデュティーユの弦楽四重奏曲は、この2曲とは全く異なる、例えばラヴェルやバルトークなどの伝統をしっかり受け継いだ語法によって作られています。いかに時代が変わってもその底に流れる情感には一貫したものがあるのだな、としみじみ思わせられるような「雰囲気」を持っているしっとりとした曲。正直、疲れている時にはリゲティやナンカーローよりはこちらの方が聴きたくなるのかもしれません。
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by jurassic_oyaji | 2006-04-05 20:23 | 現代音楽 | Comments(0)