おやぢの部屋2
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KODÁLY/Choral Works for Male Voices




Tamás Lakner/
Béla Bartók Male Choir-Pécs
HUNGAROTON/HCD 32322



ハンガリーの南部にペーチュという古都があります。ワインの産地としても知られるこの街は、毎年9月の末に「European Convivial Wine Song Festival」という音楽祭が開催されている事でも知られています。このタイトル、日本語にすると「欧州宴会葡萄酒歌謡音楽祭」とでもなるのでしょうか、「Convivial」と言う単語が入っている事によって、いかにも「飲めや歌え」といった楽しさが伝わってくる、素敵なネーミングですね。1993年に始まった音楽祭で、今年が11回目だとか、毎年やっているにしては数が合わないのは、5年に1度くらいのスパンで「欧州~」ではなく「世界~」となって拡大開催されるためです。2010年には第4回となる「World Convivial Wine Song Festival」が予定されているといいます。
その音楽祭でホスト役を務め、その「宴会」を盛り上げることに大きな貢献をしているのが、この「ベーラ・バルトーク男声合唱団」であることを知れば、ここで歌われているゾルタン・コダーイの曲で見せつけた豪放なまでのおおらかさも納得できるのではないでしょうか。
その音楽祭の音楽監督も務めているラクナーに率いられたこの合唱団が届けてくれたアルバムには、コダーイが作った男声合唱のための作品が殆ど網羅された20曲が収められています。最初の曲は、オーケストラによる変奏曲でも知られる「孔雀」です。その 馴染みのあるオーケストラ版では平板に記譜されたテーマのリズムが、ここではハンガリー民謡特有の付点音符によって歌われる事で、より「民族的」なテイストを体験する事になります。ハンガリーの他の作曲家、バルトークやあるいはリゲティでさえ自らのルーツであるといわんばかりに作品の中に散りばめたこのリズム、それがテキストであるハンガリー語に由来している事がここではっきり理解される事でしょう。もちろん、これは、かつて清水脩などによって日本語の歌詞がつけられ、全国の男声合唱団で日常的に歌われていたものとは全く別物であるというある種の感慨にもつながっていくはずです。
そんな、「ハンガリーの合唱なら、俺たちにまかせておけ」と言わんばかりの50人程のたっぷりとした編成によるこの合唱団は、トップテナーの力強い声によって、私達に驚く程の迫力を与えてくれています。ただ、このような元気いっぱいの男声合唱というのは、恐らく今となってはかなり懐かしいものであるには違いありません。最近の合唱の現場では、このようなある種泥臭いサウンドは、もっと洗練された肌触りの良いものに置き換わっているのでは、という感覚は、そんなに的外れではないのではないでしょうか。従って、いかに民族色の強いコダーイの音楽ではあっても、もう少し繊細な響きと表現があってもいいのでは、という思いがついて回ったのは事実です。それは、「夕べの歌」のような場合に、特に感じられる事、とりあえず三和音をきちんとハモらせることから音楽を作っていって欲しいと言うのが、偽らざる望みです。「カラドの歌」のように、様々な情景が次々に現れる曲でも、つい力で押しまくって一本調子になってしまっているのが惜しまれます。
これは、ワイン・ソング・フェスティバルを盛り上げる事には定評のある合唱団による、コダーイの演奏の一つの側面であると思いたいものです。それはそれでいいのですが、もっと別な面からのアプローチによるコダーイも、聞いてみたいものだと、切に感じてしまいました。そう、誇大にならない等身大のコダーイとか。
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by jurassic_oyaji | 2006-04-12 19:46 | 合唱 | Comments(0)