おやぢの部屋2
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In Love...




Peter Dijkstra/
The Gents
CHANNEL/CCS SA 23306(hybrid SACD)



オランダの男声アンサンブル「ジェンツ」の最新アルバムです。彼らは昨年の4月に初来日、各地でコンサートを行いましたが、今年の10月にも再来日が予定されているそうです。もはや、彼らのハーモニーはしっかり合唱ファンの心をつかんでしまったようですね。
その初来日のコンサートの模様が、先日テレビで放送されていました。前半は譜面台を腰のあたりに同じ高さで水平にセットして、その上に楽譜を置いて歌うというスタイルで演奏していました。そのステージでは、シューベルトやプーランクが演奏されていましたが、それは以前ご紹介したデュリュフレのアルバムで感じたのと同じ印象を与えられるものでした。音色は柔らかく、ハーモニーはこの上なく美しいのですが、何かを訴えようとする「力」が決定的に欠けているのです。
ところが、後半のステージで、譜面台を取り払って全員暗譜で歌うようになった時には、そんな事は全く感じられない生き生きとした音楽が伝わってきました。曲目はイギリス民謡を編曲した軽いものだったのですが、そこからは無条件にその美しいハーモニーに浸りきれるだけの魅力が、存分に伝わってきたのです。恐らく、このグループの資質は、このような場面で最も無理なく発揮されるのではないか、とその時感じたものでした。
今回のアルバムには、そんな、聴衆を沸かせるのに最も成功した曲が集められています。ある意味、これからの彼らの方向性を占うような内容になっているのかも知れません。その番組の中でも歌われていたイギリス民謡は、まさに超一流のエンタテインメントとしての完成された形を持っているものでした。中でも、「ロンドンデリーの歌(ダニー・ボーイ)」あたりは、指揮者のダイクストラが1コーラス目が終わるやいなや、やおらスーツの前ボタンをしめて後ろ(つまり、客席の方向)に向き直ってソロを歌い出す、というシーンが大受けでしたので、この場面を実際に体験しているファンにはこたえられない事でしょう。彼の柔らかなバリトンも、とことん魅力的です。
編曲者の顔ぶれを見てみると、ダリル・ランズウィック、ゴードン・ラングフォード、そしてボブ・チルコットと、かつて「キングズ・シンガーズ」にスコアを提供した面々が名前を連ねているのが目を引きます(チルコットなどは、元メンバー)。その「元ネタ」のいくつかは1986年に録音された日本制作盤のビートルズ・アルバム(ビクターエンタテインメントVICP-61267)で聴く事が出来ますが、彼らがこの6人組のイギリスのアンサンブルに敬意を払いつつ、さらなる高みに達しているのがよく分かります。

確かに、男声合唱とは言ってもカウンター・テナーを含む「ジェンツ」の編成は、キングズ・シンガーズをそのまま拡大したもの、恐らく目指しているところには多くの共通点がある事でしょう。実は、先ほどのコンサートでの譜面台の置き方で、まず彼らの事が連想されたのでした。そういう意味で、「ジェンツ」の将来の姿も自ずと浮かんでしまう、と思えるのも無理はないのでは。そのうちには、日本公演でのアンコール曲、八代亜紀の「舟歌」なども、アルバムに入れてくれる事でしょう。
ライナーを読んで気が付いたのですが、彼らは「プロ」の演奏家ではなく、他に仕事を持っている人たちが集まっているのだそうですね。ロースクールの学生とか、ホテルの支配人、中には教会の司祭のように、子細を明かせないような人まで。本当に歌う事が好きな人たちが醸し出すハーモニー、しかし、そこには自ずと限界も存在するのだという現実も、認識しないわけにはいきません。
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by jurassic_oyaji | 2006-04-25 19:52 | 合唱 | Comments(0)