おやぢの部屋2
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BRAHMS/Symphony No.2, Haydn Variations




Michael Gielen/
SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
HÄNSSLER/CD 93.135



最近とみに円熟度を増したといわれているギーレン、このブラームスでも、懐の深いゆったりとした音楽を聴かせてくれています。第1楽章の第2主題など、とても細やかな情感が宿っていて、心が熱くなってしまいます。確かに、かつてのギーレンではこんな体験はあまり味わえなかったのでは。もちろん、それは老成して丸くなるのとは別のことです。現に、彼の持ち味である精密なリズム感は、ここでも健在です。例えば、第2楽章の終わり近くに現れる四分の四拍子と八分の十二拍子が同時に進行している部分(つまり、2拍子と3拍子が同時進行)での、その2対3のリズムの処理の見事さには、思わず舌を巻いてしまう程ですから。
ただ、第3楽章のちょっと重たいリズムの運びには、少し抵抗を感じてしまいます。正確なリズムではあるのですが、遊びが少ない分いかにも鈍重な印象を与えられてしまいます。もっとも、ギーレンのことですからこれは意識して「鈍くさいブラームス」を演出した結果なのかも知れませんが。
特に第4楽章などでの、「ここぞ」という場面でのティンパニの威力には驚かされます。殆どバランスを無視したかに見えるその大きな音は、確かにとてつもないアクセントとして、効果的に聞こえます。ただ、録音会場が異なるカップリングの「ハイドン・バリエーション」では、ティンパニはそんなに目立ってはいませんから、これは単なるホールの特性なのかもしれませんね。こちらの方でも、その卓越したリズム感は光っています。第5変奏のシンコペーションとヘミオレなど、見事としか言いようがありません。
ところで、オーケストラの楽譜の世界では、だいぶ前から「原典版」というものが注目されていました。水戸黄門ですね(それは「ご意見番」)。現在使われている楽譜が、必ずしも信頼の置けるものではないということで、自筆稿や初期の写譜、あるいは出版稿などを比較検討してより作曲家が書いたものに近い形の楽譜を作るというのが、「原典版」の思想です。それが、急にブレイクしてしまったのは、ご存じベートーヴェンの交響曲での「ベーレンライター版」です。原典版を作る作業というのは本来地味な仕事の積み重ねですから、それを成し遂げるにはかなりの時間がかかるものなのですが、この仕事を担当したジョナサン・デル・マーは、ほんの4、5年の間に全ての交響曲の原典版(元の形は大判のスコアと校訂報告)を作り上げてしまいました。さらに程なくして安価なポケットスコアまで全て出版されるに及んで、「ベーレンライター版」は殆ど一般名詞として世の音楽愛好家の間に浸透することになったのです。
ブラームスの場合は、ピアノ曲の原典版で有名なヘンレ社の手によって、個人全集の刊行が進行中です(実は、ベートーヴェンについても、ボンのベートーヴェン・アルヒーフとの共同作業で出版が計画されているのですが、交響曲は1番と2番が出ただけで、べーレンライターと、そしてブライトコプフに先を越されてしまいました)。現在までの刊行状況はこちらを見て頂ければ分かりますが、交響曲はまだ3番までしか出ていません。その3番にしてもポケットスコアが出るのはまだ先の話だとか。
2番が出たのが2001年ですから、今回のギーレンの演奏が録音された2005年には、使おうとすればこのヘンレ版を使うことは出来たのでしょうが、この、いつも使用楽譜の版をきちんと表記してくれているレーベルのブックレットには「ブライトコプフ版」とあります。どうやら、ブラームスの「ヘンレ版」が、ベートーヴェンの「ベーレンライター版」のような扱いを受けるには、まだまだ時間がかかりそうな気配です。
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by jurassic_oyaji | 2006-04-29 20:58 | オーケストラ | Comments(0)