おやぢの部屋2
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Portrait




Rick Astley
RCA/82876 73431 2(輸入盤)
BMGジャパン/BVCM-31187
(国内盤)


リック・アストリーって、おぼえてますか?体育会系ではありませんよ(それは「アスリート」)。1987年に「Never Gonna Give You Up」というデビュー・シングルが世界中で大ヒットを巻き起こし、その歌や音楽ビデオがラジオやテレビから流れない日はなかった、という程の人気を誇ったイギリスのシンガーです。
当時隆盛を誇っていたのはダンス・ミュージック、中でも「ユーロビート」というシンプルで屈託のないサウンドは、全てのディスコ、そして音楽界を文字通り席巻していたのです。そのユーロビートの仕掛け人としてヒット曲を量産していたのが、ピート・ウォーターマンというプロデューサーを中心にした作家チーム「ストック・エイトケン・ウォーターマン」でした。彼らが曲を作りさえすれば、それは間違いなくチャートインするという、まさにヒットメーカーとして当時の音楽シーンに君臨していました。そして、そのチームの稼ぎ頭が、現在でもセクシー路線で活躍し続けているオーストラリア出身の女性歌手カイリー・ミノーグと、このリック・アストリーだったのです。
彼の場合、その様なある種「アイドル」には似つかわしくない「良い声」が特徴でした。デビュー当時は21歳だったリック、しかし、声だけ聴いたらまるで年配者のような朗々たる歌声、言って見れば「おやじ声」が醸し出すミスマッチ感が、不思議な魅力を放っていたものでした。正直、あのエルヴィス・プレスリーにも似た(あんな変なビブラートはありませんが)太い声は、ウォーターマン達のサウンドの中では違和感があったのも、事実でした。
おそらく、その事はリック自身も感じていたのでしょう。それからの数年間、この路線で多くのヒット曲を産み出した後、彼はこのチームからの決別を宣言、新しいプロデューサーのもとで、自分の声にあった曲を歌っていこうとしたのです。しかし、その様な、今まで育ててくれたスタッフにも、そして、今までの路線を期待していたファンにも仁義を欠いた行いは、この世界では受け入れられないことは目に見えています。程なく彼は誰からも忘れられ、この業界から消えていってしまいました。
それから10年以上も経って、こんな、まさに彼が長年歌いたかった歌が詰め込まれたアルバムとともに、リックが帰ってきました。かつて、とてもそこからは実年齢は想像できなかった風貌も、今では見事に2人の娘の父親にふさわしいものとなっていました。
幾分重苦しかったその声も、短くはない年月の間に、まるでかつてのバラード・シンガー、ボビー・ダーリンやアンディ・ウィリアムスを思わせるような、まさにミドル・オブ・ザ・ロードという感じの爽やかなものに変わっていました。その声が、ティム・ラウアーの凝ったリズムによるアレンジに乗って、バカラックなどの往年の名曲を歌い上げるのですから、心を打たないわけがありません。カーペンターズとは全く異なるテイストのタイトなビートによる「Close To You」も素敵ですが、オリジナルとは微妙に異なるリズムに仕上がった「What the World Needs Now」も味わい深いものがあります。そして、「好きにならずにいられない」を聴けば、かつてそっくりだったプレスリーとは全く異なる次元で彼の歌が羽ばたいているのを知ることが出来るでしょう。
私のお気に入りは、バーンスタインの「ウェストサイド・ストーリー」の中のナンバー「Somewhere」。基本はダン・ペティのアコギだけの伴奏、たまにストリングスが薄く入って力まずに盛り上がるという、ハイセンスなアレンジが見事です。
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by jurassic_oyaji | 2006-05-01 19:59 | ポップス | Comments(0)