おやぢの部屋2
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STRAVINSKY/Le Sacre du Printemps*, Mavra


Soloists
Péter Eötvös/
Junge Deutsce Philharmonie*
Göteborgs Symfoniker
BMC/BMC CD 118



ストラヴィンスキーの「春の祭典」と「マヴラ」をカップリングしたという、いかにもエトヴェシュらしいアルバムです。特に「マヴラ」などという作品、私にとっては初めて聴くもので、なかなか興味を惹かれるものでした。眠たくなることもありませんでしたし(「マクラ」、ですね)。
まず、「春の祭典」。もはやオーケストラのレパートリーとして「古典」ともなってしまったこの作品、まさに「名曲」として、さまざまな演奏家がさまざまなアプローチを試みたものが、山のように出回っています。そんな中にあってこのエトヴェシュの演奏は、作品から一定の距離を置いてあまり深い思い入れは込めず、スコアから音楽としてのメッセージを出来る限り伝えようとしているように思えます。このような姿勢の演奏、かつてブーレーズが1963年にフランス国立放送管弦楽団と行った時にはセンセーショナルなほどの物議をかもしたものですが、今となっては数多くのスタイルの一つに過ぎなくなっています。
エトヴェシュの場合、若いメンバーで構成されたオーケストラということもあって、その直截さは際立っています。冒頭のファゴットソロのなんの屈託もない明るさを聴くだけで、それは分かることでしょう。各楽器の鮮明な聞こえ方は、それこそブーレーズの比ではありません。普通はまず聞こえてくることのないアルトフルートが、こんなにはっきり聞こえる演奏など、初めてです。余計な思い入れが皆無なのは、「若い娘たちの踊り」のシンコペーションのパルスが、いともあっさり演奏されていることでも分かります。このエネルギッシュな部分をこんな風に演奏されると、エトヴェシュがこの曲から引き出そうとしたものは、粗野な力ではなく、もっと洗練された美しさなのではないかという思いが浮かんでくるほど、そしてそれは、第2部の冒頭を支配している透明な情景を味わう時、さらに現実味を帯びてくるのです。
1922年に初演された「マヴラ」は、作曲者が「新古典主義」の時代に入った時期の作品とされています。これは、彼の作った数少ない「オペラ」のひとつ。そもそもこの曲は1921年に聴いたチャイコフスキーの「眠りの森の美女」のロンドン初演に触発されて作られたと言いますから、その中にはベタなロシア民謡がふんだんに盛り込まれています。その上で、チャイコフスキーやグリンカのロシアオペラ、そして、もっと昔のイタリアのオペラ・ブッファのパロディという体裁を取っているという、何ともハチャメチャな作品です。台本にしても、そもそもタイトルの「マヴラ」というのが、登場人物の若い兵士が、恋仲の娘に頼まれて女装した時の名前なのですからね。前にこの家にいた料理人が死んでしまったので、その代わりということで召使いの振りをしてやってきた「マヴラ」、しかし、家の中に誰もいないと思って髭を剃り始めたら、母親が帰ってきたので彼女(彼)は窓から飛び降りる、という、どこかで聞いたことのあるようなストーリーです。あいにくライナーにはあらすじだけで対訳は載っていないため、細かい状況までは分かりませんが、歌手たちの大げさな歌い方の陰に潜むアイロニーは十分に伝わってきます。それを可能にしたのは、何と言っても手兵イェテボリ交響楽団の管楽器メンバーから軽妙な洒脱さと、シニカルなまでの冷徹さを引きだしたエトヴェシュの力でしょう。
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by jurassic_oyaji | 2006-05-22 19:13 | オーケストラ | Comments(0)