おやぢの部屋2
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ISTVÁN SZIGETI/Chamber Music with Flute


István Matuz, Gergely Matuz, Mária Salai,
Zoltán Gyöngyössy, János Bálint(Fl)
Marcato Ensemble
Erkel Chamber Orchestra
HUNGAROTON/HCD 32360



イシュトヴァーン・シゲティという、1952年生まれの現代ハンガリーの作曲家の作品集です。彼の名前を聞くのはこれが初めてですが、ライナーによると、主に電子音楽とかライブエレクトロニクスの分野で重要な位置を占めている人のようですね。最近になって「普通の」曲も作るようになってきたとか、その中で、フルートが加わった編成の曲が集められているのが、このアルバムです。
演奏家として参加しているフルーティストは全部で5人、その中でイシュトヴァーン・マトゥスとヤーノシュ・バーリントは聴いたことがありますが、それ以外の人は初めて耳にするものです。ゲルゲリー・マトゥスという方は、他の場所でもイシュトヴァーンと共演していることが多いので、もしかしたらイシュトヴァーンの息子か何かなのかもしれません(ご存じの方は、ご一報下さい)。
1曲目、フルートソロのための「Ritornello」は、おそらくそのイシュトヴァーンが、曲の誕生に何らかの関わりがあるのでしょう。彼ならではのテクニックを駆使したかなりシリアスな仕上がりになっています。中でたびたび登場する長いインターバルのグリッサンド(半音進行ではない、本当のグリッサンド、これはフルートにとっては至難の技です)が印象的です。エンディングで聞こえるちょっと不思議なビブラートは、電子音楽の「変調」のパロディなのでしょうか。
そのあとには、この作曲家の守備範囲の広さを示すかのような、かなり「ポップ」な曲が並びます。イシュトヴァーンにチェロとピアノが共演する形の「Why not?」(なぜか英語のタイトル)のメロディアスなことといったら。次の、3本のフルートのための「That's for You」は、まるでバルトークの「弦チェレ」のような神秘的なカノンで始まりますが、次第にミニマル風のパターンが強調されたものに変わります。全員がフラッター・タンギングで演奏するとか、楽器に何かリードのようなものを付けて突拍子もない音を出すというような「お楽しみ」も存分に味わえます。
続いての「トリオ」は、フルートになんとツィンバロン2台というユニークな編成、リリカルな部分をリズミカルな部分で挟むというわかりやすさ、その両端部分の民族カラー満載の明るすぎるリズムがなかなかです。真ん中の部分でのツィンバロン同士の微妙な音程のズレが生み出す「揺れ」も聞きものでしょう。
次のハンガリー語のタイトル(意味不明)の曲は、フルート、オーボエ、チェロ、ピアノという編成、2本の管楽器が溶け合った響きと流れるようなメロディが魅力的です。ここでフルートを吹いているのがマーリア・サライという人なのですが、このアルバムのフルーティストの中にあって彼女だけ格段に洗練された音を聴くことが出来ます。イシュトヴァーンあたりはまさに現代曲しか吹けないような特殊なフルートですから、そんな中では彼女の音はひときわ精彩を誇ることになります。
AD(ri)A」という曲は、マリンバなどが加わったアンサンブルをバックに多数のフルートとファゴットがまったり絡み合うという、殆どヒーリングの世界です。弦楽合奏に2本のフルートとファゴットという編成の「トリプルコンチェルト」は、まさにバロック協奏曲のパロディ、心和むようなひとときを味わえます。
そして、最後に控えているのが、8分59秒の間、全くブレスをとらないで演奏するという、ハンガリー語でそのまま「ブレスなし」という超難曲。こういうものはイシュトヴァーンの十八番だったのですが(彼の作品に、そういうものがあります)、これを息子(かどうかは分かりませんが)のゲルゲリーが吹いているのが、興味深いところです。生半可な人がこの循環呼吸を使うと、「重患」になりますからご注意を。
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by jurassic_oyaji | 2006-06-25 19:41 | フルート | Comments(0)