おやぢの部屋2
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MUSSORGSKY/Boris Godunov(excerpts)



George London(Bas)
Thomas Schippers/
Columbia Symphony Orchestra & Chorus
SONY/82876-78747-2



「おやぢ」を始めてから何年も経たないというのに、その間だけでもレコード業界は大きくその版図を変貌させてきました。当初からリストを作るためのレーベル名の表記などは出来るだけ元からのものを使うようにしてきたのですが、ここに来て「SONY BMG」がしっかり一つの企業だとの認識が高まってくると、このままの表記でよいのかどうか、迷わざるを得なくなってしまいます。「BMG」こそまだ「レーベル」とは認識されてはいませんが、「SONY」はれっきとしたレーベル名、しかし、それはもともと「COLUMBIA」と呼ばれていたものなのですから、こんな昔の復刻盤などが出てくると、レーベルは「COLUMBIA」と表記した方が良いような気になってきます。今はまだ「SONY CLASSICAL」という概念だけは健在のようですが、それが使われなくなり、「SONY BMGレーベル」などというものが出現した時こそが、一つの文化がビジネスによって殺された時となるのでしょう。現に、他の巨大レコード産業「WARNER」や「UNIVERSAL」に於いては、ほとんどそれに等しい事が行われたか、あるいは行われようとしているのですから。
そんな、COLUMBIAが、今では同じ企業体になってしまったかつての競争会社RCA(と言うより、VICTORでしょうか)と互いにしのぎを削っていたという「懐かしい」時代の録音が、オリジナルジャケットを前面に出した形で何種類か再発されました。その中で、これは、「ボリス」のハイライトという体裁ですが、ほとんどタイトルロールを歌っているジョージ・ロンドンのソロアルバムのような印象を与えられる物です。
1920年(1919年、あるいは1921年という説も)に生まれたアメリカのバス歌手ジョージ・ロンドンは、今では少なくとも日本のネット上では全く忘れられた存在となっています。すでに1985年には亡くなっていますし、「声帯麻痺」という病気のために1960年代の後半には歌手を引退していたということですから、それも無理のない事なのでしょう。
しかし、彼には「最初にザルツブルクでモーツァルトを歌ったアメリカ人」、「最初にバイロイトに出演したアメリカ人」、そして、「最初にボリショイ劇場で歌ったアメリカ人」という輝かしい経歴が残されています。そして、そのボリショイ劇場で歌った役こそが、この「ボリス・ゴドゥノフ」だったのです。それは、1960年9月のこと、このCDはその「偉業」の半年後、1961年3月にニューヨークで録音されたものです。オーケストラと合唱は「コロムビア交響楽団・合唱団」という覆面団体(ニューヨーク・フィルあたりでしょうか)、そして、指揮者が1977年に47歳の若さで亡くなったアメリカの指揮者、トーマス・シッパーズです。閉め忘れにはご注意を(それは「ジッパー」)。演奏と録音は、いかにもこのレーベルらしいメリハリのきいたものです(プロデューサーはあのジョン・マクルーア)。シッパーズの指揮は非常に分かりやすい表現に終始、リムスキー=コルサコフ版のオーケストレーションと相まって、スペクタクルなサウンドが充満しています。そんな中で、ロンドンは堂々とした声で圧倒的な存在感を示してくれていました。それとともに、とても細やかな感情表現も伴わせるという、深みのあるところも見せてくれています。
元はLP1枚分、40分にも満たないものですから、CDでは余白にオーマンディとフィラデルフィア管弦楽団の「展覧会の絵」が入っています。その「プロムナード」が聞こえてきた時、はたと、これは「ボリス」のプロローグの合唱にそっくりな事に気づきました。
この録音が弾みになったのでしょうか、1963年5月にはモスクワで、ロンドン以外は全てボリショイ劇場のキャストという全曲録音をこのレーベルが敢行します。あの「冷戦」時代にそんな事を可能にしたロンドンの人気と実力が、このことでもうかがい知る事が出来るはずです。こちらでも、「本場」のメンバーに一歩も引けを取らないロンドンの存在感が確認できます。

   SONY/S3K 52571
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by jurassic_oyaji | 2006-06-30 21:11 | オペラ | Comments(0)