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Live in Japan





Burt Bacharach
ユニバーサル・ミュージック/UICY-93067


先日、78歳でニューアルバムを出してくれたバート・バカラック、そのおかげで、こんな35年も前のライブアルバムまでが紙ジャケットでリリースされるという、嬉しいことが起きてしまいました。最新の「紙ジャケ」仕様、オリジナルのダブルジャケットをそのまま復元しただけでなく、このようにかつてのレーベル面が印刷されたCD本体が、それこそ「昔のまま」の高密度ポリエチレンの袋(今までは不織布が使われていました)に入っているという様子まで再現してくれているのには、涙さえ。

1971年5月7日、バカラックが彼のバンドを率いて最初に来日した時の東京厚生年金会館での演奏を収録したこのアルバムは、日本のスタッフによって録音されたもので、日本とイギリスでしかリリースされなかったもの、もちろんこれが世界初CD化となります。というより、実は1997年に彼の来日と合わせてCDとして発売されることになっていて、実際に製品も出来上がっていたのですが、バカラック本人が発売を許可しなかったために、全てスクラップになってしまったという「触れられたくない過去」を持っていたそうなのです。それが今回めでたく手元に届きました。昔愛聴していたヴァイナル盤の正確なミニチュア、感慨もひとしおです。
かつての「発禁」の理由が、その時の来日メンバーがサンプリングのストリングスを用いたものだったために、本物のストリングスが入っているこのアルバムと比較されると困る、というものだったそうです。確かに、このストリングス(これだけは日本人が参加。「東京ロイヤル・フィル」などという怪しげなクレジットがあります)の重厚な音は、このライブに見事な花を添えています。
このライブの様子は、確かテレビでも放送されました。ステージの真ん中に置かれたグランドピアノとフェンダーローズに向かい、演奏するかたわら下手のストリングスと上手のホーンを指揮する姿は、ほれぼれするほどかっこいいものでした。MCも自分で行い(そのシャイな語り口は、このアルバムでも聴けます)、時にはメインボーカルも担当するというまさに八面六臂の大活躍、しかも、演奏する曲は全て自分の作品を自分でアレンジしたものだというのですから、すごいものです。
当時、このコンサートの模様をレポートしたさる音楽評論家は、「フェード・アウトを実際にステージで行っていたのにはびっくりした」と述べていました。レコーディングであればフェーダーを操作すれば簡単に出来てしまうことですが、それを、ミュージシャンが「演奏」でやっていたのに驚いた、というのです。究極のディミヌエンドをかけたのだと。今聴いてみると、それは明らかにPAによって操作されたものであることがはっきり分かりますが、それを客席で聴いていた「プロ」でさえそれに気づかなかったほど、最新の音響機材と、そのノウハウが使われていたということになりますね。そんな当時としては最先端のパフォーマンスは、2曲目の「Walk on By」のエンディングで聴くことが出来ます。
バカラックの渋いボーカルが味わえるのは4曲目の「Raindrops Keep Fallin' on My Head」と、11曲目の「A House is Not a Home」。特に後者では、最初ピアノだけの弾き語りだったものを後半フルオケで盛り上げるというアレンジが、圧倒的な感動を呼びます。ミュージシャンの中では、華麗なフィル・インのドラムスのハイテンションが印象的ですが、「復刻」にこだわるあまり、メンバーのクレジットが全くないのは、ちょっと残念です。
有名な「Close to You」が、カーペンターズのバージョンとはちょっとリズムが違っているのにも気づかされます。あちらは全てスウィングで跳ねているのに、こちらのオリジナルでは等価の部分とスウィングの部分がきちんと歌い分けられています。確かにこの方が表現に幅が出て、曲の深みが増して感じられます。アンコールの「Promises, Promises」のように、変拍子でグングン迫って来るというのも、バカラックの魅力ですが、最近のカバーではそれを全く無視して平板なリズムに変えてしまったものがよく見られます。これは、あの「Nessun Dorma」を全て4拍子に変えてアレンジするのよりたちの悪い改竄に他なりません。バカラックの他のアルバムも一斉に紙ジャケで発売になったこの機会に、オリジナルだけが持つ凄さを体験しさえすれば、まがい物のカバーの薄っぺらさには、たちどころに気が付くはずです。おにぎりには梅干しとこれ、ということにも(それは塩ジャケ)。
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by jurassic_oyaji | 2006-07-06 20:17 | ポップス | Comments(0)