おやぢの部屋2
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HANDEL/Giulio Cesare in Egitto


Sarah Connolly, Angelika Kirchschlager(MS)
Danielle de Niese(Sop)
Patricia Bardon(Alt)
Rachid Ben Abdeslam, Christopher Dumaux(CT)
Christopher Maltman(Bar)
William Christie/
Orchestra of the Age of Enlightenment
OPUS ARTE/OA 0950 D(DVD)



「ジュリアス・シーザー」と言えばいいものを、「ジューリオ・チェーザレ」などとイタリア語読みで気取られてしまえば、「ヘンデルのイタリアオペラ=オペラ・セリア=長くて退屈」という一般常識の前には、とても見てみようという気になどならないことでしょう。ましてやDVD3枚組、ほとんど4時間になんなんとするものを開封するには、かなりの勇気が必要なはずです。こんな、いかにも暗~いジャケットですし。
しかし、昨年のグラインドボーンでこのオペラの演出を担当したデイヴィッド・マクヴィカーは、とても退屈などしていられない魅力満載のステージを作り上げてくれていました。時代設定はもちろんローマ時代ではありませんが、かといってガチガチの現代でもないという、ちょっと節操のないもの、しかし、そんなある意味「いい加減」なところが肩の力を抜かせるのでしょうか、くそ真面目なはずのこのオペラが見事にエンタテインメントとしての魅力を振りまいていたのです。
主人公のチェーザレが登場した時、その姿はまさに男そのものでした。「サラ」というファーストネームは女だけではなかったのかな、と思ったのも束の間、聞こえてきたのは張りのあるメゾソプラノだったではありませんか。どんなにメークを施しても女声歌手が男にみえることなどまずあり得ません。この間テレビで見た「ティート」でのカサロヴァあたりは、その最も醜悪な例でしょうか。音楽的には非の打ち所がなくても、あの「ディカプリオ崩れ」を見てしまっては興ざめもいいところです。しかし、サラ・コノリーはそんな小細工など必要ないほど、生まれながらに凛々しさを備えている「女性」でした。ヘンデルの時代のカストラートにはこのぐらいの凄さがあったのでは、と思わせられるほど、その完璧に「男」の歌手によって歌われたコロラトゥーラは、とてつもない魅力を放っていたのです。
舞台がクレオパトラの場面になると、トロメーオ(プトレマイオス)の、エキセントリックでぶっ飛んだキャラクターとともに、何ともポップな雰囲気が立ちこめます。そのクレオパトラ役の25歳の新人ダニエル・デ・ニースは、侍女2人を引き連れて、軽やかなダンスを踊りながら歌い始めたではありませんか。最近痛感される、それはまさに「歌って踊れる」オペラ歌手の姿です。この瞬間、グラインドボーンはウェストエンドに変わりました。このように、ローマ人サイドとエジプト人サイドでガラリとキャラクターを変えてしまうのが、マクヴィガーの演出プランだったのでしょう。しばらくすると家臣のニレーノも、いきなり踊り出して、聴衆の笑いを誘うことになるのです。もっとも、ここで笑いを取るのは、演出家にとっては本意ではなかったはずです。きっちり「ショー」として組み立てていたのに、それがお堅い「オペラファン」には通じなかったのですからね。
「ヘンデルって、こんなに良い曲書いたの?」と思えるほど、これでもか、これでもかと続く美しいダ・カーポ・アリアの洪水の中にも、お話は段々シリアスになって来ます。と、死んだはずのチェーザレが帰ってきたのを迎えたクレオパトラが、登場の時とよく似た感じの歌を、同じような振りで明るく歌い出しました。この頃にはもう笑い出すお客さんなどいませんし、終わればやんやの拍手喝采です。きちんと演出意図を受け止められるようになったお客さんのお陰で、ヘンデル、いや「ハンデル」は、250年後の同じ地で活躍するアンドリュー・ロイド・ウェッバーと全く変わらないヒットメーカーであったことが如実に証明されたのです。
そういえば、カーテンコールの時に劇の中で演奏されていた曲がもう1度演奏されていました。これなどはウェストエンド、そしてブロードウェイの常套手段ではないですか。もはやネットでは常識です(それは「ブロードバンド」)。
気の利いた日本語解説のお陰で、英語の字幕しかなくても物語はきちんと追いかけることが出来るはずです。実は、そんなものがなくても、画面からのエネルギーには圧倒されっぱなし、何度でも見たくなってしまいましたよ。ですから、日本語の字幕さえ入っていれば、というのはないものねだりです。
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by jurassic_oyaji | 2006-07-21 19:57 | オペラ | Comments(4)
Commented by ナイナイナイ at 2006-08-04 18:03 x
カサロヴァのセスト。確かに男には見えませんが、宝塚みたいでよいのでは?
でぶっちょ歌手を見せられるよりマシと思いますが。
男に見えないと上演しちゃダメなら、今のバロックオペラブームはどうなるのでしょう?
椿姫やルチアを歌うチオフィもヴィヴァルディでは男役をするのに…
Commented by jurassic_oyaji at 2006-08-04 19:57
ナイナイナイさま、コメントありがとうございました。

そうなんですよね。
どんな人が「男役」をやっても違和感があったのに、コノリーには全くそれがなかったので、びっくりしたのですよ。
Commented by kazuko at 2007-07-29 20:54 x
はじめまして、こんにちわ!
ジュリアス・シーザーで検索していてたどり着きました。
9月にアンドレアス・ショルのDVDがハルモニア・ムンディからリリースされます。どうぞこちらもご覧になってください。ヘンデルのオペラは大好きです。http://www.harmoniamundi.com/others/news_fiche.php?news_id=547
Commented by mariri at 2007-10-02 13:52 x
はじめまして。
昨日たまたまTVをザッピングしていてNHKで放送されていたのを見ました。元々オペラは大好きですが、特に詳しいわけでもありません。見ようと思っていたわけでもないのに、ついつい引き込まれて途中から最後まで見てしまいました。これは本当に演出家の勝利でしょう。繰り返しの多い長いアリアを見事に演出してくれたなぁと言う感じです。途中ダンスの振り付け等で「・・・」と思う箇所もありましたが、エンターテイメントに徹していてとても魅力的な上演でした。