おやぢの部屋2
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XENAKIS/Synaphai, Aroura, Antikhthon



Geoffrey Douglas Madge(Pf)
Elgar Howarth/
New Philharmonia Orchesrtra
EXPLORE/EXP0017



ちょっと聞き慣れないレーベル名、これはLP時代の珍しいカタログをCD化するために最近作られたものです。復刻の対象は特定のレーベルにはこだわりませんが、最初のリリースとなる今回はDECCAのものを集中して扱っています。このクセナキスはおそらく初CD化でしょう。これが、1976年にリリースされたLPのジャケット、当時DECCAが現代音楽のために設けていた「HEADLINE」というサブレーベルの中の1枚です。

      DECCA/HEAD 13
これはなかなか「時代」を感じさせてくれるジャケットなのではないでしょうか。影絵はもちろんクセナキスの横顔ですが、その上にデザインされているのはパンチングされた紙テープ、かつて「キーパンチャー」という職業の人(マンガも書いていました=それは「モンキーパンチ」)によってデータを入力されていた、その当時の記録メディアです。コンピュータ(「電子計算機」、でしょうね)を作曲のツールとしていたクセナキスをこんな形でデザインした、というところでしょうか。
収録されているのは、1970年前後の作品が3曲、その中には、少し前に大井浩明さんの演奏によるTINPANIの録音が大きな話題となった「シナファイ」が含まれています。つまり、これはあの「世紀の難曲」と言われたものの、世界初録音という「極めて貴重」なものなのです。
現代曲の場合、演奏者によってその曲の印象が変わる度合いは、普通のクラシックの比ではありません。それがまた、現代曲を聴く時の魅力となるわけですが、この曲の場合の違いはちょっと度を超しています。まず、演奏時間が、12分、大井さんの16分の四分の三しかありません。あの目の覚めるような大井さんのものより、さらに早い演奏が、この時点でなされていたのでしょうか。ところが、実際に聴き比べてみると、このマッジの演奏は、オーケストラともどもとても和やかなものでした。別に楽譜が改訂されている様子もないのに、最初にピアノソロが出てくるまでにすでに一分ほど短くなっています。それは、細かい音符を早く弾いたというのではなく、なんかいい加減にごまかして辻褄を合わせたような印象を与えられるものでした。もちろん、これは今聴くとそう思えるのであって、録音された当時はこれ以上のものは不可能だったのではないでしょうか。メディアがパンチングテープからDVDに変化して、画期的に記録データが増大したのと同じことが、演奏の世界でも起こっていたのが、まざまざと感じられます。その結果、かつてはなにかおどろおどろしいイメージでしかなく、全体としてのとらえどころがはっきりしていなかったものが、一つ一つの音、そしてそのつながりの中に、きちんとした「意味」なり「メッセージ」が込められているのがはっきり分かるようになってきます。曲全体の三分の二以降、ピアノのカデンツァ(10段の楽譜!)のあとに繰り広げられるオーケストラとピアノとの「対話」、あるいは「バトル」の意味は、残念ながらマッジたちの演奏からは伝わってくることはありませんでした。
同じことが、やはりTINPANI録音がある「アンティクトン」の場合にも感じられます。これは演奏時間はほとんど変わらない分、それぞれのテクスチャーの違いははっきりしてきます。本当に同じスコアに基づいているのかと思えるほど、その志というか、方向性には彼我の感が存在しているのです。言葉の綾ではない、「アナログ」と「デジタル」の違いが、これほどはっきり見分けられることも希です。なにしろ、始まってしばらくして聞こえる金管ののどかなテーマを、ハワースは本当に情緒たっぷりに歌わせているのですから。
従って、今のところ比較の対象が手元にない「アロウラ」の場合は、逆の意味でその叙情性をなんの抵抗もなく、たっぷりと味わうことが出来ることになります。弦楽器だけで演奏されるこの曲での、例えばグリッサンドあたりはなんと美しく心に響くことでしょう。もちろん、他の演奏に接した時には全く異なる印象を抱くことになるのでしょう。それでいいのです。それこそが、まさに現代曲を味わう時の究極の醍醐味なのですから。
今回のCD、せっかく、オリジナルのライナーノーツも掲載したのですから、オリジナルのジャケットもどこかにあれば、もっと価値が増したことでしょうに。ちなみに、録音データもLPには「197511月」と表記されていますから、「197611月」という記載はまちがいでしょう。
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by jurassic_oyaji | 2006-07-26 20:11 | 現代音楽 | Comments(2)
Commented by IANIS at 2006-07-30 21:29 x
モードmode152
ヨハネス・カリツケ&アンサンブル・レゾナンツのディスクに「アウロラ」が入っています。
Commented by jurassic_oyaji at 2006-07-30 22:08
IANISさん、お久しぶりです。
早速、入手してみようと思います。