おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
HOLST/The Planets



Simon Rattle/
Berliner Philharmoniker
EMI/3 59382 2
(輸入盤)
東芝
EMI/TOCE-55855/56(国内盤 8月23日発売予定)


ホルストの「惑星」といえば、太陽系の、地球を除く7つの惑星の名前をそれぞれタイトルに持つ7つの曲の集まりとして誕生したものでした。作られた当時は9番目の惑星である「冥王星」はまだ発見されていなかったため、最後は「海王星」で終わるという構成になっていました。それは、女声合唱のループが延々と続く中にフェイド・アウトがなされ、その先の果てしない宇宙空間に思いを馳せる、という趣向だったのでしょう。
しかし、せっかくだから「冥王星」も加えて全ての惑星を含んだ形でこの名曲を完結させたいという動きが、世紀の変わり目に起こります。2000年にケント・ナガノから委嘱を受けた1946年生まれのイギリスの作曲家、コリン・マシューズ(それまでに、ホルストの楽譜の校訂などをしていた実績を買われたのでしょう)によって作られた「冥王星」が、その年の5月にナガノ指揮のハレ管弦楽団によって世界初演されたのです。さらに、翌2001年の3月には、マーク・エルダー指揮の同じオーケストラによって初録音され(HYPERION/CDA 67270)、世界中の人の耳に届くことになります。「惑星」からの引用はありますが、ホルストの作風とはかなり肌触りの異なるこの「冥王星」は、しかし、ごくすんなりとオリジナルの曲の中に受け入れられたように見えます。それ以後に録音されたCDでは、かなりの数が「冥王星付き」となっていますし、実際のコンサートでもこの「8曲版」を取り上げる指揮者は増えています。卑近なところでは、あさっての8月6日にも、宮崎で開催される日本アマチュアオーケストラフェスティバルで、岩村力の手によって演奏されるはずです。アマチュアのオーケストラが取り上げるというレベルまで認知されたということで、確実に「冥王星」は「惑星」の仲間入りを果たしたと考えて良いのではないでしょうか。
もっとも、最近では冥王星を惑星と見なすこと自体に疑問も投げかけられているようですから、先行きは不安です。学問的には「惑星」ではないのに、曲としての「惑星」には入っている、などという事態にならなければいいのですが。
ところで、太陽系の惑星には、冥王星うんぬんを議論する前にホルストの曲からは抜けているものがありました。それは、火星と木星の軌道の間に存在する多数の(現時点で30万個以上)小さな天体の集まり、「小惑星」です。もちろん、「大」も臭いはず(「小は臭え」)。そこで、その小惑星をテーマにした曲を「惑星」に加えようと考えたのが、ベルリン・フィルのシェフ、サイモン・ラトルです。いくらなんでも30万曲は無理ですから、とりあえず4人の作曲家に1曲ずつ委嘱しました。フィンランドの重鎮カイヤ・サーリアホの「小惑星4179:トータティス」、ドイツの若手マティアス・ピンチャーの「オシリスへ向かって」、イギリスの中堅マーク=アンソニー・ターネジの「ケレス」、そして、元ベルリン・フィルのチェリストでもあるオーストリアの作曲家ブレット・ディーンの「コマロフの墜落」というのが、その4曲です。いずれも、程良い難解さを持った、しかし、まるで映画音楽のようなスペクタクルな外見を持つ、聴き応えのある作品です。中でも、ソユーズ1号の乗組員で、宇宙での最初の犠牲者となったソ連(当時)の宇宙飛行士を扱ったディーンの「コマロフの墜落」は、リズミカルなパターンに導かれたジャズっぽいテイストが、親しみやすさを呼んでいます。
このCDは、今年3月に行われたその様な「『フル』惑星」の、もちろん世界初演のコンサートを丸ごと収めたものです。「小惑星」が入った2枚目のCDの余白はエンハンストCDとなっていて、ラトルと、そしてそれぞれの作曲家(サーリアホだけは字幕によるコメント)のインタビューやリハーサルの模様が映像で見られるようになっています。
実際のコンサートでは、この「小惑星」が演奏されたあとで、いわゆる「惑星」が演奏されました。それは実に賢明な構成だったのではないでしょうか。先にこの無気力で投げやりな演奏の「惑星」を聴いてしまったら、とても後半の現代曲を聴こうなどという気にはならなかったことでしょうから。
[PR]
by jurassic_oyaji | 2006-08-04 20:00 | オーケストラ | Comments(3)
Commented by ちぇり at 2006-08-09 23:19 x
 このCD結構期待をしていたのですが「惑星」の演奏駄目ですかね?買おうかどうか悩んでいるのですが?
Commented by jurassic_oyaji at 2006-08-09 23:58
>ちぇりさま
 コメントありがとうございました。
 私のまわりでは「つまらない」という意見が大勢ですが、案外この素っ気なさに人気が集まるのかも、とは思います。私の趣味を押しつける気は毛頭ありませんから、ぜひ楽しんで下さい。
Commented by ちぇり at 2006-08-12 00:20 x
 ありがとうございます。きいてみます。