おやぢの部屋2
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BRAHMS/Complete Symphonies








Roger Norrington/
Radio Sinfonieorchester Stuttgart des SWR
HÄNSSLER/93.903(DVD)



ベートーヴェン、メンデルスゾーン、マーラーなど、多くの作曲家の交響曲全集を着々と進行中のノリントンとシュトゥットガルト放送交響楽団のコンビですが、いきなりブラームスの4つの交響曲が出たのには驚いてしまいました。しかもCDではなくDVD、ちょっと珍しい形のリリースです。ブラームスの交響曲に関しては、ギーレンのCDが同じレーベルで出たばかりなので、そのあたりに配慮した結果なのでしょうか。
このDVDは、彼らのホームグラウンドであるリーダーハレで収録されたものです。ただ、全員燕尾服姿の本番モードなのですが、聴衆がいる気配が全くありませんから、おそらくコンサートの前のゲネプロを撮ったものなのでしょう。指揮者をとらえるカメラも木管のすぐ前にありますから(これを探すのに、苦労しました)、「別撮り」を行ったカットもなく、リアルタイムでスイッチングしていたのでしょう。いわば、限りなく「ライブ」に近いもの、CDでも最近ではことさらセッションを設けることなく、「ライブ」をそのまま使うことが日常的になってきているという現状を考えると、演奏の精度自体にはなんの遜色もないということが出来ます。しかも、このDVDの場合には音声トラックが通常の2チャンネルステレオと、5・1サラウンドが選択できますから、スペック的にはSACDと同程度のものが提供されていることになります。その上に、各交響曲の前には20分ほどの指揮者ノリントンのインタビューが収録されています。彼はCDのライナーノーツの中でもその曲に対する自分の思いの丈を子細に述べていますので、それと同じ、あるいははるかにその「思い」が深く伝わる肉声が、日本語字幕によって味わえるのですから、これはかなりポイントが高くなります。これだけのものが揃ってCD3枚分ほどのお値段なのですから、割安感は募ることでしょう。これからはこういう形のリリースが増えてくるかもしれませんね。
その映像と、事細かなインタビューによって、このユニークなコンセプトを持ったチームの特色が明らかになります。楽器の配置はいわゆる「両翼方」というか「対話型」という、ファースト・ヴァイオリンとセカンド・ヴァイオリンが両サイドに位置するもの、普通この配置だとコントラバスが下手奥にあるものなのですが、ここでは真後ろ中央に一列になっているのが特徴的です。そのコントラバスの前には木管楽器、そして、その木管を挟むように下手にホルン、上手にトランペットとトロンボーンという、ここでも「対話型」を形成している点が、注目されるところでしょう。そして、16型の弦楽器に対しては、木管楽器を倍増させる「倍管」編成をとるというのも、ノリントンの主張です。「減るものでなし」と、腰元に迫るのでしょうか(それは「代官」)。
演奏が始まると、弦楽器のメンバーは全くビブラートを掛けていないことがすぐ分かります。普通のオーケストラではまず見られない、ちょっと異様な光景、これこそが、このチームの誇る「ピュア・サウンド」が産み出される現場だという思いが、ヒシヒシと伝わってきます。しかし、しばらく見ていると、その様な「掟」に背いている人が時おり見られるようになってきます。いつもの習慣でつい無意識に手首が動いてしまうのでしょう、それに気づいて、慌ててノンビブラートに戻す様子が、とても可愛らしいものです。
その点、管楽器奏者は、ビブラートに関してはそれほど神経質にはなっていないように見受けられます。とりあえずフルートあたりはほぼ全員木管の楽器で統一しているぐらいの配慮、ソロともなれば普通のノリで歌いまくっています。ノリントンの求めたものはあくまでトゥッティにおける「ピュアさ」なのでしょうから、ソロに対しては固いことは言わないのかも知れませんね。
その様なサウンド面だけではなく、ノリントンのこだわりは楽譜の読み方にも現れています。単に楽譜に忠実に、というだけではなく、その当時のブラームス特有の表現を、楽譜から読み取ってそれを再現しようという試みです。その最もショッキングな成果が、交響曲第2番の冒頭でしょう。この部分、ホルンと木管によるテーマは、4小節単位でひとかたまりに歌うというのが、ごく一般的な演奏ですが、ノリントンはなんと1小節ごとにボツボツと切って吹かせているのです。確かに、スコアではスラーは1小節ごとに付いていますよ。


「楽譜通り」というのは、こういうことなのですね。このやり方は、もちろん他の部分でも貫かれますから、この曲全体が全く異なったテイストを持つことになります。これは、かつてモーツァルトあたりで味わった新鮮さ、ただ、ブラームスの場合はこれが主流になるとはとても思えません。もちろん、ノリントンはそんなことは気にもせず、刺激的な試みをこれからも続けてくれることでしょう。
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by jurassic_oyaji | 2006-08-06 20:04 | オーケストラ | Comments(0)