おやぢの部屋2
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Carmen de Sole




Matti Hyökki/
YL Male Voice Choir
ONDINE/ODE 1045-2



CDを店頭で買うということが殆どなくなって久しい今日この頃、「通販」にもなかなか奥深いところがあるのが分かってきました。ポイントは火加減ですね(それは「チャーハン」)。このCDも今年の初めごろインフォを見つけて注文したのですが、一向に入ってくる気配がありませんでした。この手のものは一度機会を逃すと入手できないものが多いので、もうすっかりあきらめていたところ、半年以上も経って突然「入りました」という連絡が届いたのです。待っていれば、いつか報われる日は来るものなのだという真理をかみしめているところです。ただ、実際に手にしてみると、これは2004年にリリースされたものですから、もはや「新譜」とは言い難いのですが、入荷に半年ではなく2年かかったと思って、大目に見て下さいな。
YL」というのは、フィンランド語で「学生合唱団」をあらわす言葉の略語だそうです。この場合は、1883年にヘルシンキ大学で創設された男声合唱団のことを指します。古い歴史を持つ、文字通り世界を代表する男声合唱団として、よく知られています。この合唱団は、積極的に同時代の作曲家に曲を委嘱して、それをレパートリーとしてきました。ここに録音されているものも、1曲を除いて全てこの録音が「初録音」となる「新曲」のオンパレードという、かなり贅沢な内容になっています。
以前「タッラ」というフィンランドの男声アンサンブルを取り上げたことがありますが、このメンバーがこの合唱団のOB、というか、この録音でも一緒に参加していますから、あの印象的な「ソプラニスタ」、パシ・ヒョッキの声も聴くことが出来ます。ですから、ここには「男声合唱」と言われてつい連想しがちな重々しい響きは皆無、スカッと抜けるような明るいサウンドで、現在主流になっているのかもしれない軽めの「男声」を堪能できるはずです。その典型が、もはやフィンランドを代表する合唱作曲家と言ってもいい、ヤーッコ・マンテュヤルヴィの「いかめしく冷たい葬送のワルツ」。サティの「ジムノペディ」を思わせられるような、しゃれた曲です。意識して女声に近いパートを用いているのでしょうか、「男声」にありがちな閉塞的なサウンドとは無縁な開放的な響きが楽しめます。もちろん、曲自体もタイトルとは裏腹に、この作曲家の持ち味のエンタテインメントに満ちたものです。
聴く前から楽しみだったのが、湯浅譲二の「新作」です。「Four Seasons from Basho's Haiku」というタイトル、もちろん「芭蕉の俳句」が元ネタだと、我々には分かります。四季折々の芭蕉の句を、日本語のオリジナルと、その英訳のテキストを並行して聴かせるというものです。日本語は、まるで声明のようなモノフォニー、それに対して英語ではテンションコードを多用したホモフォニーという分かりやすさです。もしかしたら、日本語の単旋律は、ヨーロッパの人にはグレゴリオ聖歌のように聞こえるのかも知れませんね。演奏しているフィンランド人には感じられないかも知れない、そのテキストと音楽のキャラクターの関連が、我々にはきちんと理解できるという、これは湯浅が仕掛けた巧妙な冗談なのかも知れません。ブックレットのテキストも派手に間違えてますし。
もう一つ、かなりウケたのは、セッポ・ポホヨラといういかにもフィンランドらしい名前の作曲家の「シューベルトへのオマージュ」という曲です。シューベルトの有名なリートをコラージュに仕立てたもの、「水車小屋の娘」から始まって、「菩提樹」まで、ヒットチューンの断片が単純なパルスの中から顔を出すという仕掛けです。作曲者は「これはジョークではない」と言いきっていますが、そんなコメントも含めて難易度の高い冗談として味わえるものになっています。


そもそも、このCDのパッケージそのものが、冗談に満ちたもの、ジャケットにはスタジアムの椅子のようなものが写っていますが、そのシートナンバーが全くデタラメになるように「細工」されていますし、そのスタジアムの遠景でしょうか、インレイのこの写真は、気づかないかも知れませんがパターンの繰り返しになっています。
ブックレットを翻訳したのが、かつてはそれを職業にしていたマンテュヤルヴィだというのも、もしかしたら冗談なのかも知れません。
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by jurassic_oyaji | 2006-08-15 20:22 | 合唱 | Comments(0)